日別アーカイブ: 2019年5月15日

赤い広場―霞ヶ関 p024-025 ソ連代表部の2人はクリコフ船長たちの釈放を要求

赤い広場ー霞ヶ関 24-25ページ ルーノフとサベリヨフ、2人の元ソ連代表部員は北海道各地を駆け巡りクリコフ船長ほか3名の船員の釈放を要求。
赤い広場ー霞ヶ関 p.024-025 Rounov, Saveljov, Soviet representatives demand release of Krikov captain and three sailors.

2 八月二十一日欧米第五課に、一両日中に前記二名が旭川に行くからと連絡があった。

3 八月二十三日午後七時東京駅発列車にて、参事官兼政治顧問代理ルーノフ、領事部書記サベリヨフの両名が北海道へ出発した。

4 八月二十五日午前十時四十分旭川駅へ到着した。両名は直ちに北海ホテルに入り、午後一時四十分まで休憩した後、旭川方面隊を訪れ、隊長に面会、午後二時十分頃まで会談し次の申入れを行った。

a 樺太と北海道は近接しているので、色々の問題が起ると思うがお互に円満に解決して行きたい。

b 拘留中のソ連船員四名に面会させてほしい。

c 四名を出来るだけ早く釈放してほしい。

これに対し隊長から『旣に事件は検察庁に送致してあるので、詳細は検察庁で聞いて貰いたい』と回答した。

5 そこで両名は引続き、旭川地方検察庁を訪れ、午後二時二十分より同五時三十分の間検事正と面会。国警とほぼ同様の申入れを行ったが、交渉に先だち『ソ連代表部員として公式の立場で交渉したい』と申出た。これに対し検事正は、『公式の立場の交渉は検察庁の管轄外であるから、外務省へ行ってもらいたい』と拒否したので、結局個人の立場で交渉した。

ソ連側の申入事項は

a 四人のソ連人に面会させてほしい。

b 果物等の差入れをしたい。

c ソ連船に弾痕があるというニュース映画を見たが、賠償を要求したい。

d 小樽へ行ってだ捕された船を見たい。

これに対し検事正は

a 逮捕は国内法に基き合法的に行われたものである。

b 拘留は三十日迄あるので釈放の時期は分らない。

c 四人に対する面接は、裁判所から禁止命令が出ているので応じられない。

d 差入については便宜を図る。

e 弾痕の問題については、海上保安庁の管轄であるから回答できない。

f 船は外から見る分は羡支えないだろうが、大事な証拠品だから中に入ることは出来ない。

と回答した。

これに対してルーノフ氏から『ニュース映画にも内部まで出してあるのに何故見せられないか。ニュースで見ると、弾のあたった痕が出ているが、小樽へ回航したのは弾痕の修理をするためじゃないか』との追求があったが、これに対し検事正は『自分達は法規を守るのが任務だから、法規を曲げることは出来ない』と回答した。

この回答に対し、『私達の印象を悪くしないようにした方がいいだろう。この事件が表面化した場 合、あなたの責任に影響するだろう』