日別アーカイブ: 2019年10月21日

赤い広場ー霞ヶ関 p.160-161 対ソ情勢の基礎判断とは

赤い広場ー霞ヶ関 p.160-161 The Soviet Union, through the Communist Party of Japan, is inciting anti-Americanism against the US imperialism and the Yoshida reaction cabinet. It is also trying to contain the repatriate problems and territorial issues.
赤い広場ー霞ヶ関 p.160-161 The Soviet Union, through the Communist Party of Japan, is inciting anti-Americanism against the US imperialism and the Yoshida reaction cabinet. It is also trying to contain the repatriate problems and territorial issues.

四 〝猿〟と〝猿廻し〟と

二十七年三月七日、つまり日本独立の直前であり、高良女史がヘルシンキからモスクワ入りした四月五日のさらに直前に、この日付の東京新聞が「日本政府筋の見解」として、その対ソ情勢の基礎判断を大要次のように報じている。これはスターリン賞の大山氏夫妻やモスクワ会議の帆足氏らの旅券申請に関連してまとめられたものである。

一、第三次大戦の危機は確定的なものではない。ソ連の政策はあくまで米国との対決を避けながら局限戦争をタネに自由世界に経済的、心理的の混乱を起すことにある。

二、ソ連は目下米国との対決に勝つ自信をもっていない。現在のソ連の主目標は、大戦を避けつつ日独をソ連圏にひき込むことにある。だから日本に進攻した場合に、大戦が起る危険が明らかであれば、ソ連の対日直接侵略は起らない。ソ連は日本の共産化をあきらめてはいないから、日本の国内惑乱は今後強化される。

三、ソ連は平和条約を阻止できぬことを悟って民族主義的宣伝を強化した。それは、日本に米国が駐留を續ける関係上、日本人の反ソ分子でも同時に反米気分をもっているかぎりは、すべて利用できるという考え方である。特にその主力を追放解除の旧軍人、旧極右派、有力実業家においている。

四、このようなソ連の政策は昨春以来組織的に行われている。昨年八月の日共五一年テーゼが、敵は「米帝国主義及びそれと結びつく吉田反動内閣」と規定して、資本主義を敵とすることを一時やめ

ていること(いわゆる民族資本家を利用するねらい)、九月平和会議でソ連が修正案を提示して、日本側の制限付再軍備を承認するとともに、米軍駐留にあくまで反対したこと(これは日本人の壊夷思想に訴えたものでゾルゲ事件と同じく極右を利用するねらい)、十一月の革命記念日にソ連代表部が「保守反動」分子を招待し、また日ソ貿易を示唆したこと、本年元日のスターリン・メッセージが、「独立」を呼びかけたこと、有力実業家をモスクワ経済会議にひき込もうとしていることなど、一貫した反米闘争扇動の手段である。

五、一方講和発効後日本側の出方如何では、ソ連は従米のソ連代表部の如き特権的な工作基地を失うことを心配している。しかも工作基地を残すために、日本政府と正式交渉を行えば、引揚、漁船捕獲問題などソ連に不利な問題が提起され、日本人の反ソ機運を強め反米機運を弱める。そこで政府を無視して直接裏口から日本国民に好意を示し、特に有力者に働きかけて政府をケンセイさせ、一方的に特権的工作基地を保持しようとするねらいである。

六、そこで日ソ関係が法的に明確化しない前にソ連向旅券を発給することは、日ソ関係は不安定のままでよいと日本政府が認めることを意味し、その結果は引揚問題、領土問題と解決を不可能にし、今後の日ソ関係を一方的にソ連の決定に委ねることになってしまう。

七、日本としては日本政府を無視するソ連の工作に敢然対処し、引揚、領土などの諸問題が解決しないかぎり、ソ連の平和攻勢は受付けないという態度にでることが必要だ。