日別アーカイブ: 2020年4月26日

黒幕・政商たち p.082-083 必ず顔を見せる右翼の先生方

黒幕・政商たち p.082-083 赤坂の料亭「金竜」で、児玉誉士夫、吉田裕彦が立ち会い、一派の永光伝、大橋富重らが、居る中で、東棉代理人岡林から、今西、柴山へ一千万円が手渡され
黒幕・政商たち p.082-083 赤坂の料亭「金竜」で、児玉誉士夫、吉田裕彦が立ち会い、一派の永光伝、大橋富重らが、居る中で、東棉代理人岡林から、今西、柴山へ一千万円が手渡され

早速、この話を内緒にせねば、光明池の痛いハラも探られては叶わんというので岡林、佐々木会談が開かれ、告訴取下げという条件で、話が進められた。その時、佐々木の大映手形パクリ事件のさいに、その保釈金二百万円を立替えたということで、佐々木の代理人と称する、白垣某が登場してきた。児玉誉士夫一派の幹部吉田裕彦氏の子分である。

そればかりではない。港会の親分波木量次郎氏も、この広布産業事件を書きたてるオ色気専門の日刊観光との仲介にと乗り出してきた。サア事は大変になってきた。こういう事態になっ

てくれば、金を出して「ヨロシク」と、頭を下げて廻る役廻りは、〝伝統ある綜合商社〟東洋棉花以外の誰でもない。

一方、光明池で、用地課長に贈賄して〝事務的処理〟の促進を図った柴山は、日本電建—東棉—興亜—東棉—興亜—公団と、コトがうまく運んだにもかかわらず、彼への「手数料」が来なかったので社長の今西と共に「岡林から一千万円をおどし取った」ことにされた。本人はもちろん、〝手数料を正規に請求〟したにすぎないという。

この時も、赤坂の料亭「金竜」で、児玉誉士夫、吉田裕彦が立ち会い、一派の永光伝(大元産業社長、児玉の片腕吉田の直系)、大橋富重らが、キラ星の如く居流れる中で、東棉代理人岡林から、今西、柴山へ一千万円が手渡され、それも東京勢四百万、大阪勢六百万と分割されて、大阪勢は、今西、柴山は各二百万、他の一人が二百万と分配されたそうだ。

さて、こうして眺めてみると、一体、この事件で誰が稼いだのか、というバランス・シートを作ってみたいものだ。損をしたのは間違いなく東棉。イヤ、〝損な役廻り〟というべきか。馴れない不動産部門を作って、岡林の素性も調べず、ハンコ一切を預けて、嘱託の肩書を認めたのだから、豊田の責任が追及されるのも当然。さらに府警の調べから、実弟が金融業をしていることも判り、地価吊りあげの共犯から、私腹を肥やした疑いまでかけられている。だから、戦前からの東棉マンたちは、金の得失にかえられない、社名のドロを嘆いている。

会社のモメ事には、必らず顔を見せる右翼の先生方は別としても、左翼の志賀先生まで登場するのだから、この事件のスケールが判ろうというもの。

関係者の誰れ彼れにたずねても、バランス・シートの人名表は出してくれないが、最後に、当時、公団宅地担当理事であって、光明池に反対した滝野好暁氏をたずねた。公団の総務部長、監事、理事と進んだ、消防庁出身の生え抜きで、現在は社保連常務理事にある人。氏が公団を去ったあと、理事には河野人事で、ラジオ関東から弘田竜之進が入った。

「私もまだこんな団体の役員でいるから、そのことは話したくない。しかしですね、河野一郎という人は、大キライですナ、私を呼びつけて、大勢の人がいる前で、バカヤロー呼ばわりで、クビにするゾと怒鳴りつけたですよ。かりにも、住宅公団の理事をですよ。そんな態度をとるというのは、人間として認めていないことです。何で呼びつけられ、何でクビにするぞといわれたか、それは、まだ、話す機会ではありませんな」

滝野氏には、数年前の〝暗い想い出〟がまだよみがえるのだろうか、暗たんとした表情がよぎった。〝力は正義〟なのだろうか。検察が解明できないというのであれば、与論だけしか期待できないのだろうか!

黒幕・政商たち p.084-085 福田蔵相の名を使い不渡り手形

黒幕・政商たち p.084-085 昭和四十年。八月十一日付毎日新聞朝刊=福田蔵相の名を使い、不渡り手形を出したゆうれい会社事件を国会で 追及
黒幕・政商たち p.084-085 昭和四十年。八月十一日付毎日新聞朝刊=福田蔵相の名を使い、不渡り手形を出したゆうれい会社事件を国会で 追及

第5章 怪談「流通機構社」のその後

昭和四十年。八月十一日付毎日新聞朝刊=福田蔵相の名を使い、不渡り手形を出したゆうれい会社事件を国会で追及、十日の衆院商工委員会で、民社党の麻生委員は、全日本流通機構会社にまつわる疑惑などについて、大蔵、通産両省、中商企業庁当局の責任を追及した。

黒幕・政商たち p.086-087 福田一元通産相の息子の福田弘

黒幕・政商たち p.086-087 会長福田赳夫、顧問、湊日興証券社長、星野東京ヒルトン副社長、飯塚国学院大学教授、相談役、神谷トヨタ自動車販売社長、社長は、福田一元通産相の息子。ところが、その手形は、全部不渡り。
黒幕・政商たち p.086-087 会長福田赳夫、顧問、湊日興証券社長、星野東京ヒルトン副社長、飯塚国学院大学教授、相談役、神谷トヨタ自動車販売社長。社長は、福田一元通産相の息子。ところが、その手形は、全部不渡り。

会長が大蔵大臣の会社

詐欺を働いても安全?

衆議院議員麻生良方。民社党所属で東京一区選出の知性派である。まず、この人の話から紹介しよう。この麻生議員の言葉が信じられないことはあるまい。

「私は、全日本流通機構株式会社の件を、衆院商工委で質問するに当って、関係者である福田赳夫蔵相や福田一元通産相に質問の連絡をしました。すると、御両人とも、本人じきじきに、幾度か私のもとに連絡をされてきました。これでも、事件の内容というものが推察されるではありませんか。そして福田一議員などは、『イヤ、いろいろとユスられて困っているんだ』と、述懐されていたほどです……」

つまり、麻生委員の質問は、同社のパンフレットを印刷した「さとう印刷」という会社は、そのパンフレットに、「会長福田赳夫、顧問、湊守篤(日興証券KK社長)、星野直樹(東京ヒルトンホテル副社長)、飯塚重威(国学院大学教授)、相談役、神谷正太郎(トヨタ自動車販売KK社長)」と、現役大蔵大臣をはじめとして、知名人の名が記入されており、社長は、福

田一元通産相の息子ときいたので、すっかり信用して、手形払いの条件で仕事を引受けた。ところが、その代金四十四万円の手形は、全部不渡り。こんなことがあってよいものか、蔵相は承知しているのか、といったものである。

これに対し、福田蔵相は出席せず、大蔵省の村上官房長が代って答弁に立ち、「結論からいうと、承諾を与えたことはない。三十九年春知人が青年を連れてきて『最近の流通機構の近代化について、話を聞かせてほしい』といい、大臣は『準備なり資金がととのわないと……』と説明した。ところが、四十年の一月に会社ができ、名前が使われているというので、誤解を招くといけないと知人を呼び、大臣が語気強くパンフレットの回収と名前の削除を命じた。電光石火のようにものを買って姿をくらましたため、誠に申しわけない。大臣に就任してから、会社の役員などは全部やめている」と、弁明した。(毎日紙)

さて、これで、大体前後の事情はのみこんで頂けたことであろう。つまり、福田一元通産相の息子の福田弘なる人物が、代表取締役になって、本人の許可もなく、会長に福田赳夫の名前を使い、さらに、顧問、相談役などに一流財界人の名前を並べて、取込み詐欺同様のマネをして、会社は〝蒸発〟し、社長はノウノウとしている、といった事件なのであるが、不思議なことには、これが、いわゆる事件化しないのである。つまり、刑事事件として、十分な要件を揃えておりながら、何故か〝不発〟なのである。

黒幕・政商たち p.088-089 福田一はユスられて困っている

黒幕・政商たち p.088-089 この金を渡す時、福田一議員はクドイほど「これは不渡り手形の買戻し代金ではない。あくまで、親として息子の不始末への寸志です」と、念を押した
黒幕・政商たち p.088-089 この金を渡す時、福田一議員はクドイほど「これは不渡り手形の買戻し代金ではない。あくまで、親として息子の不始末への寸志です」と、念を押した

そこで、冒頭の、麻生議員のいう「福田一さんは、ユスられて困っていると、述懐していた」という言葉を、思い起して頂きたい。何故、福田一議員がユスられねばならないのだろうか。

なお、この麻生質問のあとで、福田一議員から、麻生議員へ申し入れがあったのだ。つまり、息子の不行跡によって、迷惑をかけた相手に対して、親としての誠意を見せたいというのである。そして若干の金が、福田一議員からさとう印刷社長に対して贈られた。その金額は、関係者が明らかにしないので不明だが、この金を渡す時、福田一議員はクドイほど「これは不渡り手形の買戻し代金ではないですよ。あくまで、親として息子の不始末への寸志ですよ」と、麻生議員に念を押したという。

この辺のところが、私がこれから語ろうとする〝怪談〟の、ナゾ解きのヒントなのである。

さて、毎日新聞の記事を読んで、これは何かがありそうだと感じた私は、これを切り抜いてスクラップした。それから数カ月後に、Yというイニシアルの男が元流通機構の社員で、事情に詳しいという話を聞いたのであった。

あるミシン会社の社員になっているという、そのYを探すため、まず各社の人事部を調べたが、本社員に該当者はいない。次は、各支店ごとに持っている、セールスマンの名簿だ。これを丹念に調べていって、ついにYの居所をつきとめたのである。そして、Yは私の会見申込に

応じて、都心の喫茶店に現われた。

おそまつな〝ごあいさつ〟

問題の全日本流通機構株式会社は、登記とう本によると、代表取締役に福田弘(福井県大野市亀山二二八)=注。福田一議員の選挙区=金沢政男(大阪市住吉区中加賀町四ノ六一)の両人がなっており、福田蔵相の名前はない。資本金二千五百万円で、四十年一月十二日設立。

「全国唯一の全国組織をもつ、共同仕入供給の代行機構です」と謳う、会社概況によると、営業種目は多様である。乾物嗜好品、乳製品、調味料、菓子、缶詰等の食料品。外衣、肌着、寝具等の衣料。化粧品、日用雑貨、薬品、酒類、時計、家具等の消費財。前記商品の販売業務と輸出、輸入及び製造と加工。

陳列用ケース、レジスター、計量器、車両等の営業用什器、備品類、包装品等の営業用消耗品。運送及び倉庫業務。旅行あっせん、共同店舗の経営、広告宣伝の請負及び代理業務。生命保険及び損害保険の代理業——。これだけ、列記されているのであるが、この営業種目と、前記キャッチ・フレーズとの間に、何かチグハグな印象が生れないだろうか。

これが〝会長〟福田赳夫以下の連名による、第一頁の「ごあいさつ」になると、さらに意味が判らなくなる。その「ごあいさつ」を紹介する。