日別アーカイブ: 2021年6月27日

正力松太郎の死の後にくるもの p.322-323 大森さんは佃書記官からあの文書を入手

正力松太郎の死の後にくるもの p.322-323 驚いた私は、この毎日OB記者の証言の、さらに裏付けを求めて、走り廻った。ある外交評論家が肯定した。「デビ夫人の話やら、スカルノ亡命説など、国民はもっとウラを考える必要がある」
正力松太郎の死の後にくるもの p.322-323 驚いた私は、この毎日OB記者の証言の、さらに裏付けを求めて、走り廻った。ある外交評論家が肯定した。「デビ夫人の話やら、スカルノ亡命説など、国民はもっとウラを考える必要がある」

「大森外信部長の退社の真相は、例の大スクープ、ウントン自供書ですよ。ウントン自供書なるものは、米CIAの謀略文書だったのです。彼があれを強引に発表したのち、毎日内部、論説系の人たちの間から、猛然と批判の火の手が上りました。
そして、彼も責任をとらざるを得なくなったのです。紙面の問題だからこそ、狩野編集局長

も、出版担当へと異動させられたのです。論説や編集幹部の間では、CIAの謀略文書を意識して掲載したと、判断されたのです。汚職みたいなものです」

驚いた私は、この毎日OB記者の証言の、さらに裏付けを求めて、走り廻った。ある外交評論家で、インドネシアの現地も踏んでいる人物が肯定した。

「今、日本の新聞、雑誌にハンランしているデビ夫人の話やら、スカルノ亡命説など、国民はもっとウラを考える必要がある。亡命説などは、ある意図のもとに、CIAが流している与論形成です。毎日のウントン自供書なるモノも、CIAの謀略用文書であることは、間違いありません。どうして、大森さんは、あんなものを見破れず、堂々と署名して出したのでしょうか。判断に苦しみます。しかし、その責任を明らかにしたことは、流石に、大毎日です。

アメリカは、スカルノに石油会社などを接収されて、情報活動のアジトを失ってから、在インドネシア日本大使館への、情報依存度を高めています。従って、斎藤大使、遠藤公使以下、大使館員は大変です。機密費だって本省からくる分では足りないらしく、デビ夫人や商社とからんでの、黒い噂が出るほどです。

アメリカのグリーン大使というのが、CIA出身ですから、日本側からは連絡係として、佃泰一等書記官が、PKI視察の専門家として派遣されているほどです。大森さんは佃書記官から、あの文書を入手したはずですよ」

さらに調査を進めると、「空路、羽田に飛んできた男を待ち構えていて、銀座のバーで書類をうけとった」とか、「TBSの前に構えた事務所をごらんなさい。彼の資金は豊富ですよ」など、さらに「アメリカの黒い霧に包まれた退社などの話が、つきつめてみると彼の周辺から流されている」「大宅壮一氏と組んで雑誌を出すらしい」「彼の周辺というのは大宅氏のクチコミです。だから、週刊誌が一番に動いた」などと、真偽を判じ難い情報がうずまいている。

しかし、明らかになったことは、佃一等書記官は、二十三年組の警視正で、外務省に出向していた警察官である。いわば対共産党の専門家、CIA係の大使館員としては、CIA担当官であることは、十分うなずける。また、TBS前の新赤坂ビルの事務所というのは、毎日の先輩であり、四十年サイエンス・ランドで御喜家氏と組んで活躍していた、小谷正一の関係での入居であり、格別、〝豊富な資金〟などと、〝黒い……〟 ムードの表現は不必要であること、などであった。

そしてまた、大森自身もまた、当時、このことを否定して、私に会いたがっていた、ということを聞いた。

私の結論としては、ウントン自供書なるものが、CIAの謀略文書であるかどうかは、「データ評論」という(昨今の評論家たちのはすべて〝ムード評論〟でありすぎる)、データにもとづく評論という、私の主張から、にわかには断じ難い。ただ、前述のように、外信部長として、

「自供書」と断定して発表するには、慎重を失したといえよう。