日別アーカイブ: 2021年10月12日

新宿慕情 p.134-135 快美神経の移殖はまだムリらしい

新宿慕情 p.134-135 戦争のおかげで、軍陣医学が進歩して、整形外科の技術は大いに向上した、という。弾丸が当たって、オチンチンを吹き飛ばされた場合など、オナカの皮を丸めて、まず…
新宿慕情 p.134-135 戦争のおかげで、軍陣医学が進歩して、整形外科の技術は大いに向上した、という。弾丸が当たって、オチンチンを吹き飛ばされた場合など、オナカの皮を丸めて、まず…

仮性には、仮性男性半陰陽と仮性女性半陰陽とがある。見てくれは女性だが、ほんとうは男性というのが前者で、後者はその反対である。
彼は、この前者であった。尿道下裂症といって、〝棒〟の裏側のジッパーがこわれている。これが、オナカについているのだから、どうみても、ドテである。
亀頭部は発育不全で、その上部にこぢんまりとついているから、これまた、どうみてもサネで

ある。陰嚢は、睾丸が腹腔中に滞留しているので、クシャクシャになって、ジッパーのこわれて裂けた部分の、下のほうについているから、産婆さんがみても、親兄弟がみても、どうしても、女に見える。

こうして、彼は、女児として育てられた。小学校の高学年になったころ、腹腔内の睾丸がソケイ部におりてきたが、医者に見せたら、オデキだ、というので、切除されてしまう。翌年、反対側の睾丸がおりてきて、これもオデキ扱いでパチン……。

とんでもないヤブ医者のおかげで、彼は、男性機能の睾丸をふたつとも、切り取られてしまったわけだ。

戦争のおかげで、軍陣医学が進歩して、整形外科の技術は大いに向上した、という。

弾丸が当たって、オチンチンを吹き飛ばされた場合など、オナカの皮を丸めて、まず、トランクの把手みたいなものを作りあげ、組織が生きるのを待つ。

この把手の上の部分(ヘソに近いほう)を切り離し、オチンチンの根元に縫合する。把手を一段下に移すわけだ。これまた組織が生きるのを待ってもう一度、反対側を切り離してブラ下げる。

快美神経の移殖は、まだムリらしいが、ともかく、これで、パイプがブラ下がっているのだから、排尿と、体裁だけは整えられることになる。

オナカの皮膚で、海綿体ではないので、ボッキは望むべくもない、ということだ。

東大法医学教室の、鑑定写真でみると、全裸のスタイルは、全体に丸やかで、やはり、女のハ

ダカの感じである。それから、外陰部の写真と、その〝一見大陰唇風〟のもの(例のジッパーのこわれたもの)を押しひろげて、膣口がないことを示した写真など、ゼヒ、おめにかけたいのだが、割愛せざるを得ない。

見てくれは男だが、実は女性というのは、陰核が発育肥大して(といっても、正常な男性よりは小さい)〝一見陰茎風で〟あり、外陰部がブラ下がっていて、これまた〝一見陰嚢風〟なのである。

戦前の女子医専を卒業した産婦人科の女医が、実は男性仮性半陰陽で、付近の娘たちを、次々と犯していった、などという事件も、この、ノガミ時代に書いたことがあった。

こうして、半陰陽についての私のウンチクは、新聞記者としての〝臨床例〟で、蓄積されてきたものだが、カルーセル麻紀などという、性転換の旗手が現れてくると、やはり、〈社会部記者根性〉が、ウズイてくる。

あらお兄さん!

某年某月某夜——一パイ気嫌で、歌舞伎町から、社の方向へと歩いてくると、とある〝呼びこみバー〟の子が、「アラ、お兄さん!」と、声をかけてくるではないか。

そのハスキーな声には、ゾクゾクするような、ナニカがあった。振り向くと、やや大柄ながら夜目にも美しい女だった。吸い寄せられるように、そちらに戻っていった。