黒幕・政商たち p.146-147 〝戦前派学習院〟閥という集団

黒幕・政商たち p.146-147 この徳川宗敬氏の友人が芝山氏。牧野伸顕伯に見込まれ、吉田茂氏に推挙されて、世耕事件として有名な隠退蔵物資摘発の筋書を組んだ、ディレクターである。
黒幕・政商たち p.146-147 この徳川宗敬氏の友人が芝山氏。牧野伸顕伯に見込まれ、吉田茂氏に推挙されて、世耕事件として有名な隠退蔵物資摘発の筋書を組んだ、ディレクターである。

三社の対抗意識は、北海道進出にもみられるが、民放でも明らかである。読売の日本テレビ、

毎日の東京放送、朝日の教育テレビ、十二チャンネル、といった具合だ。サンケイは、文化放送、ニッポン放送、フジテレビと大きく頑張っている。

一方、読売が読売ランド計画を進めると、毎日はすぐドリームランドと手を握り、朝日は、国立こどもの国を支持するといった調子である。この三社のランドがいずれも神奈川県にあるのも面白いが、立ち遅れたサンケイは、独自にサンケイランドを計画し、吉浜海岸の造成地を考えた。

この造成地三万坪は、池袋の白雲閣の土地で、サンケイは「買う買う」と、白雲閣を引ッ張って造成工事を相手に進めさせながら、計算してみると、民有地だから高すぎて金繰りに無理がくると判断した。その結果、白雲閣を引ッ張り放しでポイと棄て、御喜家氏のサイエンス・ランド計画に乗り換え、水野氏が積極的に乗り出したのである。つまり、毎日がドリームランドと組んだように、サンケイはサイエンス・ランドと組もうとしたわけである。従って、発起人九十九氏の中には、マスコミからは、地元紙神奈川新聞社長が加わっているほかでは、サンケイだけといういきさつがある。

さらにまた、旧聞に属するが「文化放送事件」というのがある。そもそも文化放送を設立したのは、イタリー人神父マルセリーノ氏が、伝道用にというのであったが、何かとモメゴトが多く、元公爵徳川宗敬氏が社長になるハズのところ、何時の間にか逆転劇が仕組まれていて、水

野氏が乗っ取った形で社長となり、徳川氏は放逐されてしまった。

この徳川氏の友人が芝山氏である。牧野伸顕伯に見込まれ、吉田茂氏に推挙されて、第一次吉田内閣時代に、経済安定本部に勤務して、世耕事件として有名な隠退蔵物資摘発の筋書を組んだ、ディレクターである。そもそも氏の目的は日本軍の兵器を国府軍に渡し、増強して中国大陸の安定を期するにあり、それ故にこそ吉田茂氏も氏を起用したのであったが、兵器譲渡は米軍とのカネ合いで挫折し、物資摘発が主な仕事になってしまったという。

芝山氏は徳川氏のために、大いに憤慨して水野攻撃のチャンスを待っていたといわれる。そこに白雲閣事件である。サンケイ・ランドの用地造成のため、無理な金融をつづけていた白雲閣の苦境を知り、氏は義憤を感じてサイエンス・ランドに現れた。サイエンス・ランドを利用し、それを乗ッ取るという、水野氏一流の手口について、警告するためにだった。

〝戦前派学習院〟閥という、集団に非ざる集団があるとしよう。そんな〝閥〟があるかも知れないし、ないかも知れない。しかし、あるとすれば芝山氏は、それをバックに持つ隠れた実力者であろう。

その〝実力〟を知ったランド側は、フン詰り脱却のためのコンサルタントとして、氏の指導を仰ぐことになったのである。こうして、発起人の再編成が行なわれた。九十九名の配役表は、姿を消し、ホンモノの発起人十二氏が固まった。この時、サンケイ水野氏も退陣し、五千株の

一株主となって、ランドは芝山氏に敬意を表した。