再販制度というのは、「再販売価格維持契約制度」といって、販売店がメーカーの指示価格で売るという契約を認めたものである。この独禁法の〝抜け穴〟が認められたのは、当時の小
売市場の販売価格の混乱から、消費者保護を必要とするということだったが、やがて混乱が納ってくると、この特例はかえってメーカー保護の妙味をみせてきて、はじめからこの狙いがあったのではなかったか、とさえいわれてきた。
それを示すものが藤山愛一郎経企庁長官時代、中山伊知郎氏を会長として設けられた「物価問題懇談会」の四十一年六月の医薬品、化粧品、石けん、洗剤の四家庭用品についての報告書で指摘された再販制度の弊害がこれを雄弁に物語っている。
同報告書の「再販制度の三大欠点」は、
①流通機構の合理化による利益を消費者に還元していない。
②メーカーのか占化によって価格のこう着状態が起っていても、それを小売価格まで反映させている。
③リベートその他の小売業への過大なサービス、過剰な宣伝広告によって、消費者の利益を害するばかりか、浪費を助長する。
以上の三点に示されるようにさまざまな社会的問題を起すなどの弊害をもたらしているというものである。
そこで、公取委では本格的検討の時期がきたとして、国会に「再販制度規制法案」を提出したが流れてしまったもので、山田公取委委員長は、再提案を公約している。
この再販制度が、大正製薬のかつての目覚ましい大躍進をもたらしたほか、資生堂などの大メーカーにはことのほかの恩恵を与えていた。〝ビタミン戦争〟なども、同制度の招いたものだが、いずれもマスコミの大スポンサーであるため、「広告出稿停止」などのポーズで新聞雑誌をおどし、化粧品、医薬品業界の醜い内幕は、いままでほとんど報道されていない。
関係者の話もそえねばならない。
経済専門誌編集長村田忠氏の話
「化粧品と一口にいうが〝制度品〟と〝一般品〟とがあり、クリームでいえば、前者は八百—千円、後者は百—三百円というほど格差がある。品質そのものにはそれほどの差はないようだ。〝制度品〟というのが、問題の〝再販制〟に指定されている品物のことだ。資生堂はじめ大手メーカーがそれだ。
資生堂の例でいうと、定価千円のうち二百四十円は宣伝広告経費だといわれており、〝花椿〟の発行部数は五百万部ともいう。これらの数字をみても、資生堂の収益が想像されよう。
自由化でマックス・ファクターの〝侵攻〟が心配されたが、さすがにそれを押えたのは資生堂だともいわれている。しかし、その実情も、消費者への経費をおしつけによる高価格という〝アグラかき商売〟の結果だというのだから、皮肉なものだ。
広告宜伝費がぼう大だということが、広告代理店とのナレアイの不正や、暴力団のつけこむ
スキとなる。女性がオシャレをして、暴力団を〝養って〟いるとすれば、これほどの喜劇はあるまい」