佐藤首相秘書のD氏が、このほどさる右翼評論家を介して、クビ切られたB氏に会見を申し
こんできている事実もある。「東棉」の〝痛いハラ〟をめぐる情勢は、告訴取下げによって地検特捜部の手を離れた形にはなった。
大会社でも、問題は何か分らぬが、一小新聞の現場記者に、二十万円を包む問題があるのだから、小会社となればなおさらのことである。ことに、政治家が出入りしている会社というのは、さらになおさらである。
中央観光事件の波紋
さる四十二年八月九日の参院決算委は、「逓信運輸協会」なる郵政省監督団体についての実態究明を行なったが、質問に立った社会党大森創造委員の狙いは、逓信運輸協会問題は佐藤首相の名前があるので、それらを究明するとともに増田甲子七防衛庁長官の融資あっせんをただして政界につながる「中央観光」事件をほり下げることにある模様である。
「中央観光」事件とは、さる六月二十三日に、四百七十万円の不渡りを出して倒産した「日本福利厚生センター・中央観光」という社名の株式会社で、倒産当時「中小企業をレジャーで釣る、会員一万八千、四億余円集め倒産」と報道されたが、実は単なる〝レジャーで釣っ〟たのではなく、増田甲子七、川島正次郎、進藤一馬各代議士らが関係、中小企業者から五億近い
金を集めたばかりか、日本長期信用銀行、東海銀行などからも二億五千万円の融資をうけるなどして、捜査当局に内偵されていた事件である。
同事件には、さらに関係者として都知事選ニセ証紙事件の根本米太郎(川島議員元秘書)、田中彰治事件のキッカケとなった、吹原・森脇・大橋事件の大橋富重(同上事件で保釈出所中)両氏らの〝スター〟がおり、大森議員の追及如何によっては、ふたたび、財界をめぐる疑獄事件に発展する可能性があり、次回決算委の日程を決める十四日の理事会と警視庁の捜査の成り行きが注目された。
大森議員が取りあげた「逓信運輸協会」問題というのは、調査に当った栗田勝広議員秘書(「共和製糖事件」の著者、俗に〝大森特捜班〟といわれる調査活動の中心人物)ら関係者の話を総合すると、次のような事情にあった。
同協会は郵政省の外郭団体として、昭和二十五年に設立、理事には佐藤栄作氏、迫水久常、荒木万寿夫氏ら自民党の有力者や藤井丙午、早川真平氏ら財界の知名人たちがズラリと名前を連らねている。
当初は補助金も貰って多少の活動はしていたらしいが、最近では全くの休眠団体。これに眼をつけたのが政界に縁の深い月刊J誌のHという人物で、同協会の飯島事務局長と語らって、中央観光の小島社長のところへ話を持ちこんで来た。小島社長は、手詰りの事業を、この協会
を利用して拡大しようという目論見をした。