業界で予想していたのなら、広告代理店も、新聞社側も知らぬハズはあるまい。広告を掲載
し、料金はガッチリ取り立てる——商売は、トランプのババヌキみたいなもの、とはいいな がら、このトッポさ。朝日新聞広告部は、中身にヤカマしいだけではなかった。
これには、後日譚がある。読売、毎日両社は、その扱い代理店ともども、朝日より深手を負ったことは確かである。そして、会社更生法適用の記事が、読売、毎日共に四段抜きのトップなのに、朝日は二段二十五行。さすがに気がさしたのであろうか。この〝商売〟、新聞社のやることだけに果して、釈然たり得るであろうか。
——ここにもまた、われわれは朝日新聞社の本質を、かい間みることができる。倫理綱領さえ設けて、広告内容の審査を行ない、公然と不掲載を断行する、朝日広告部の姿勢を通して……。
防衛庁と伊藤忠商事をめぐり、自殺者まで出した、いわゆる「機密ろうえい事件」に関して、防衛庁の防衛研修所長が不起訴処分となったことがある。
さる四十三年五月十二日、朝日と読売の記事をみくらべてみよう。
朝日記事。「防衛研修所長は不起訴、機密ろうえい=一段六行=防衛庁機密ろうえい事件を調べていた、東京地検公安部は、十一日、防衛庁防衛研修所長 有吉久雄氏(四十八)の自衛隊法五十九条(秘密を守る義務)違反容疑について、容疑不十分で不起訴処分とした」
読売記事。「防衛研所長は不起訴、機密ろうえい事件=一段十八行=東京地検は、前航空自衛
隊第二技術学校 副校長川崎健吉一等空佐(四十八)の、防衛庁機密ろうえい事件に関連して、防衛庁防衛研究所所長 有吉久雄氏(四十八)(東京都目黒区中央町二の六の六)を、自衛隊法五十九条(秘密ろうえい)違反の疑いで調べていたが、十一日朝、容疑不十分で不起訴処分にした。
有吉氏は、四十年九月から四十二年六月まで、防衛庁長官官房防衛審議官だったが、四十一年末ごろ、港区赤坂の防衛庁内で、朝日新聞篠原宏記者に、職務上保管していた『秘』の表示のある、『第二次防衛力整備計画事業計画案の概要』を閲覧させた疑いで、取り調べを受けていた」
読みくらべなくとも、朝日記事の中には、「朝日新聞篠原宏記者」の項がない。朝日記事のスタイルは、続報記事の書き方で、すでに、有吉所長の取調べが報道されており、その結果を報ずる時の記事である。これについて、論評を加える必要はあるまい。
さらにまた、前述した「佐々木環一億円サギ事件」のさいの、板橋署の六人の刑事が、佐々木の愛人宅で入浴したり、ソバ代を踏み倒したという、キャンペーン記事がある。
朝日のキャンペーン記事については、糸川ロケット事件をはじめ、問題にしなければならないものが多くあるので、それは後の機会にゆずって、ここでは、その終りの部分に触れたいと思う。
四十二年八月二十七日付の、読売、毎日には、警視庁が朝日に対し、記事取り消し方を申し入れた旨が報じられているが、そのことは遂に、朝日には掲載されなかった。
読売は、「……と、朝日新聞に報道された問題について、警視庁は二十六日午後九時半から、
槇野警務部長らが、異例の記者会見をし、『一部に誤解をまねくようなことはあったが、入浴、昼寝、昼食代踏み倒しの事実は、きょうまでの調査結果で無根とわかった。このため、朝日新聞社に記事の取り消しを含めた善処方を求めた』と、発表した。……」