日テレの株主は、東洋信託七・五%、読売新聞七・四%、野村証券三・八%、光亜証券(注。
野村系)五・五%、読売テレビ五・○%の順で、読売系を合計して一二・五%の大株主となる。従って、読売から社長を送りこめるか、どうかというと、読売出身の社長では、亨と棒組にならざるを得ない。
日テレのみならず、TBSをふくめて、最大の問題は、組合攻勢による人件費の高騰である。かつて、新聞が民放ラジオを作ったとき、新聞は人材を抱えこんで、カスを放出したという。ラジオが定着して、テレビが生まれるとき、ラジオもまた、人材は残してカスを出したといわれる。そのせいか、給与ベースは現在、全く逆転して、テレビが一番よくなっている。
日テレ経営陣にも、人がいなかったようである。それが、この粉飾決算の事情を雄弁に物語る。すでに、報知で組合に押しまくられて、正力にすら〝諦らめ〟られた〝経営者〟亨と、棒組みを組んでのお守り役社長となれば、読売本社から、火中の栗を拾いに行く奴はいない。しかも日テレ社長ともなれば、ある程度は名が知られておらねばならない。読売社内では、常務編集局長の原四郎の呼び声もあるが、原が動くとは思えないので、読売から社長がでる線は可能性がない。
同じ大株主野村証券の相談役、奥村綱雄の声もでているし、ダーク・ホースとして、大映社長永田雅一の名もあがっている。読売では、永田を警戒して、永田に乗りこまれる位なら、本社から出そうという意見もあるようだが、所詮は、亨がいては人材が名乗り出ないからムリであろう。
すると、やはり、奥村あたりにおちつき、亨は副社長を外されて平取。次期あたりで退任、かくて、大正力の最後の仕事だったともいうべき、民放テレビの草分け、栄光の日本テレビは、万骨の恨みを秘めたまま、正力コンツェルンから、静かに去ってゆく——ということになろう。
日テレが変貌した時、大阪の読売テレビの去就が問題となろうし、第三者社長が、東京タワーなり、NHKタワーなりに依存し、難視聴地域を解消し、さらに九州ネット局を加えての、再びTBSに拮抗しようという、新しい〝テレビ戦国時代〟の幕あきとなるかどうかである。
四十四年十一月二十六日、注目の日本テレビ株主総会が開かれた。午前十時から二時間にわたる総会は、元改進党代議士で、栗田政治経済研究所を主宰する栗田英男の一人舞台に終始した。栗田の粉飾決算の追及はキビしかった。粉飾当時の経理局長→取締役→監査役の柳原幸三郎、その後任の経理局長→取締役の柳原承光の二人がツカまえられた。栗田の質問は、それぞれが「いつ、どんな形で粉飾を知り、誰に報告し、誰の指示を受けたか、あるいは、誰に命令されたか」という、一番イタイところを衝いた。これに対し、二人はただ頭を下げるばかりで、「責任を痛感して、すでに辞表を社長のもとに提出しているので、その儀ばかりはゴカンベンを……」と、ついに答えなかった。
だが、この総会で、一つ解せないのは、人事が全く取りあげられなかったことである。どうも福井社長と栗田との間に、ある〝密約〟があって、今期は人事をイジらず、粉飾の後始末を福井
にやらせる、という感じである。亨の副社長もまた一息ついた、というところだ。