雑誌『キング』p.131上段 幻兵団の全貌 スパイ誓約者は3種

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.131 上段
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.131 上段

てしまうのだった。

3 現況

だが果たして不気味な合言葉は、すでに東京においてささやかれているのだろうか。筆者は『然り』と答えたい。

だが、誓約書を書いた数万にのぼる人たちの、すべてが組織されているのではない。スパイとなるという誓約書を書いた人たちを分類すると、三種に分かたれる。

その一は、日本の共産革命に協力するという意気込みで、欣然として署名した人々。

その二は、生きて帰るためなら、どんなことでもしようと、軽く引き受けてしまった人たち。だが、この種の人は、船がナホトカの岸壁を離れると同時に、一切は御破算だといって笑っている。

その三は、みてきたソ連の現実から、その誓約書に暗い運命を感じて、ひとりおそれ、ひとり悩み、ひとり苦しんでいる不幸な群れである。彼らは、誓約書に明示された破約の報いに、生命の危険をも感じている。このような人々が、Ⓑスパイたちの八割は占めている。

欣然と働いている『ソ連スパイ』たちの数は、誓約書の約一割、日本国中で千をはるかに越えるだろう。彼らは異口同音に、筆者に答える。