この会社が、当時〝玄人筋〟の注目を集めてきたというのは、他でもない。このほど、(四十年春)自民党田川誠一議員が、「国有財産の厳正な処分をのぞむ、サイエンス・ランドをめぐる諸問題」と題する、署名入りのA5判(月刊誌大)七十八頁に及ぶパンフレットを印刷して、報道関係その他へ配布したからである。
このパンフレットは、経過説明に十七頁、法律的問題点解説に七頁、資料五十頁という内容で、もちろん題名からいっても、サイエンス・ランド反対という、同議員の主張が山盛りになっている。資料篇中の国会議事録の写しなどは、三十九年四月の衆院決算委(五頁)、三十九年十二月の同地方行政委(二十五頁)における、田川議員のランド反対の質問振りが、あますところなく収録されているが、同議員の吊し上げに対する当局側、大蔵省政府委員のノラリクラリ答弁が出ているので、何か田川議員の一人角力の感じがしないでもない。
それというのも、田川議員のランド反対、イヤ、ランドの事業予定地である国有地払下げ反対論に対し、大蔵省側は、払下げを決めている訳でもないし、払下げ申請が出ている訳でもなし、何でそんなにリキムんですか、といわんばかりの馬耳東風、もしくはのれんに腕押しを眺めている、といった風情だからであろう。
ところが、このパンフレットには、体裁から内容にいたるまで、幾つかの問題点があるのが読む者をして、オヤと首を傾けさせ、ハハンとうなずかせるのである。それらの問題点はあと
にゆずって、まず、株式会社サイエンス・ランドについてみよう。
さきに〝玄人筋の間でにわかに注目〟と書いたのは、大衆の密着すべきレジャー企業にもかかわらず、不思議とこの会社のことは、一般の新聞雑誌に書き立てられない。しかも田川議員が国会であれほど問題にしているにもかかわらず、新聞は書かないのである。だから、大衆にとっては、〝注目〟することができず、〝玄人筋〟だけがみつめている、ということになる。
何故、新聞雑誌が書かないかという説明も田川パンフレットに関係してくるので、これもあとにゆずるが、一般のマスコミが取上げなかったというのは、正確ではない。田川議員が反対運動をはじめてからは取上げていない、というべきか、或は、田川議員の反対運動を取上げなかった、というべきである。
というのは、ランドの企画が発表されてからは数誌がその記事を書いている。例えば、アサヒ芸能誌(39・5・3号)は「一流社長一〇〇人を総なめにした〝怪物〟」として、この会社の〝氏素姓〟に焦点を合せている。事実、当時としては、この〝怪物〟に記事のピントを合わせるのが、ニュース・ヴァリュウの判断として、当然のことであった。
会社が発行した三種類のリーフレットがある。
第一回目は、三十九年二月五日現在として、サイエンス・ランド設立委員会名儀のものだ。この五色刷り、厚手アート紙のリーフレットをひろげてみると、それこそ、五色刷りも顔
負けのけんらん豪華さ——発起人御芳名として、足立正東商会頭から、木川田一隆東電社長にいたるまで、実に八十七名にも及ぶ一流財界人の名前が、目白押しに並んでいる。