第一回目は、三十九年二月五日現在として、サイエンス・ランド設立委員会名儀のものだ。この五色刷り、厚手アート紙のリーフレットをひろげてみると、それこそ、五色刷りも顔
負けのけんらん豪華さ——発起人御芳名として、足立正東商会頭から、木川田一隆東電社長にいたるまで、実に八十七名にも及ぶ一流財界人の名前が、目白押しに並んでいる。
経済誌社長の肩書
第二回は、それより九日後の同年二月十四日現在、名儀も進捗して、サイエンス・ランド創立事務所となり、御芳名も前回の順不同とは変って、御署名順となっている。ここでオカシイのは、署名順でありながら、前回連名に見当らない、「神奈川県知事・内山岩太郎」の名が、勿然と躍り出て第一行目に位置している。第二番足立会頭から、順序は前回と同じく、木川田一隆社長まできて、さらに五島昇東急社長ら七氏が加わり、合計九十四名という圧巻。
仔細に名簿を調べると、前回名簿の中程に位置していた、中司清鐘化社長が抜けており、その代りに内山知事がふえているので、九十四名になる。まさか、中司社長が内山知事のミス・プリントだとはいえまいから、この辺にランド側の浅智恵が覗かれるのだが、末尾には、会社側の役員予定者とみられる、肩書のない山村鉄男、小谷正一、御喜家康正の三氏が控えている。後に問題となってくるのがこのリーフレットである。
さらに第三回、同年四月七日現在となると名儀は「株式会社サイエンス・ランド」となり、創立完了を示し、発起人御芳名は第二回と同名同順の上に、またまた、堀江董雄東銀頭取ら五
氏が新加入、実に九十九名となったのだが、筆頭発起人の内山知事の名前の上には、サッと黒一筋、その名を抹消しているので、実員九十八名。まさに〝赤穂浪士〟以上の豪華キャストである。末尾三氏もまた前回と同じで、印刷されていないその肩書をみてみると、山村氏は日銀理事、小谷氏は電通社長室顧問、御喜家氏は経済雑誌「評」発行所「評論新社」社長とある。
さきに紹介したアサヒ芸能誌のいう〝怪物〟とは、実にこのドンジリに控えた御喜家氏のことである。同誌記事によると、氏は評論新社社長といえば聞えはいいが、その前身は「総会屋」だとしてその時代における一流財界人接近の手口を説明し、この九十八名もまた、このような手口で動員したのだといわんばかりに、見出しに〝総なめ〟などと入れている。
NHKの赤穂浪士が、そのスター動員力を誇示したドラマであったがために、何かと話題になったのと同様に、御喜家氏の科学遊園地計画もまた、財界スター動員力を誇示したがために、話題になると同時に、各種の妨害をも誘起したのであった。
しかも、この計画が、ランドの建設予定地として、十分に話のついていない、神奈川県辻堂海岸の旧海軍演習場跡の、約六万坪をあて、それを印刷物にまで刷りこんだのだからモメるのも当然であろう。