黒幕・政商たち p.134-135 〝政治問題化〟を図る田川議員

黒幕・政商たち p.134-135 この辻堂演習地については、接収解除に努力した内山知事の、その努力による自負から、自分の胸先三寸で何とでもなるといった官僚に良くみられる国有財産の私物視が、会社側の判断を狂わせた
黒幕・政商たち p.134-135 この辻堂演習地については、接収解除に努力した内山知事の、その努力による自負から、自分の胸先三寸で何とでもなるといった官僚に良くみられる国有財産の私物視が、会社側の判断を狂わせた

市村氏のいう一部の妨害とは、明らかに河野派の妨害であり、それは当然、親方河野一郎氏の了解、もしくは指示によると解されるのだから、尚更のことである。「力は正義なり」方式

で、河野氏の実力振りになびかざるを得なくなる。

それは、四月七日の決算委における、大蔵省江守管財局長の答弁によく現れている。サイエンス・ランドなどは、今の行政手続上の段階では、全く関係がありません、という冷たい態度でありながら、速記録をよく読んでみると、その行間には、「困るなァ、ランドも。こんなにモメないよう、ウマクやってから大蔵省に持ってきてくれなくては! 政治力がなさすぎるよ!」と、舌打ちでも出そうな感じが、読み取れるのである。

それはともかくとして、県会は三月二十五~七日の常任建設委の審議から、さらに本会議に持ちこみ、ランド反対、公園促進、知事の善処という、意見書の決定まで行い、このような地方議会での余勢を駆って、地方での〝政治問題化〟から中央での〝政治問題化〟を図る田川議員の質問になったのであった。〝政治の問題化〟したということは、もはや〝政治的解決〟を図る以外、打開の途がないということである。それには、一番手ッ取り早い「金」もあろうし、「物々交換」もあろうし、「利権」も「選挙」もあろう。伴睦流の「足して二で割る」もある。いずれにせよ三十九年の四月上旬で、株式会社サイエンス・ランドは、こうして、完全に行き詰ってしまったのである。

ここまでの段階を、時間的にみれば、計画の具体化から僅か数カ月である。御喜家氏によれば、「案がまとまったのが二年ほど前、三十八年九月から会社廻りをはじめて、翌年の二月に

ようやく百社の賛成を得ました」(前出アサヒ芸能誌)というが、百社のスター・キャストは組めたが、肝心の地元政界の政情分析から、中央政界への関連性など、さらには官僚研究など、重要課題を全く無視しているのであるから、氏の前歴その他がうんぬんされるのも無理はない。

かりそめにも、今日の日本の社会構造で、億単位の事業をしようというのに、政、官界の研究なしにスタートするというのは、暴虎馮河の勇、ことにその事業の舞台に、六万坪の国有地を想定するにいたっては、もはや言を俟たないところである。

もっとも、この辻堂演習地については、接収解除に努力した内山知事の、その努力による自負から、自分の胸先三寸で何とでもなるといった官僚に良くみられる国有財産の私物視が、会社側の判断を狂わせたと、みられるフシがないでもない。

それは、県立公園という名目で、六万坪だけ確保しておき、何かウマイ話に使ってやろうという、知事のハラも読めるようである。ランド計画は二年前(御喜家氏)というし、三年四カ月の間大蔵省へはナシのつぶて、発起人承諾、「(ランド促進の)当方の趣旨を認めた後の申請書取下げ」という大蔵省への公式回答など、一連の事実をつづりあわせると、そんな答が出てこよう。