黒幕・政商たち p.176-177 「麻薬」には常に国家の意思が

黒幕・政商たち p.176-177 梅毒と並び称されながらも、その背後関係をみる時「麻薬」のもつ、国際的、思想的、政治的な謀略性は、「梅毒」の比ではないことは、明らかである。
黒幕・政商たち p.176-177 梅毒と並び称されながらも、その背後関係をみる時「麻薬」のもつ、国際的、思想的、政治的な謀略性は、「梅毒」の比ではないことは、明らかである。

私がピンときたというのは、〝鈴木の謀殺〟ではないか、ということである。鋤本被告のい

う通り、鈴木がピストル自殺であれば、問題である。

また、何故、鈴木が一般病院に出されたかという疑問である。鈴木がスパイとして仲間を売ったことを恐れていれば、調書でもいっているように、仲間の制裁は予想されるところだ。当時の病院の警備は? ピストルの入手先は? 射った手の硝煙反応は? 死体検案書は? ピストルの捜査は?——まだ、一つも裏付け調査にかかっていないので、疑問だけだが、鈴木が、死ぬことを、或は殺されることを、心中秘かに期待した者は誰だろうか?

松尾警部の心中行、麻薬課長の妻の脅迫の噂、そして、スパイと密売人の二足のワラジの男の死——これらの一連の問題は、確かにその背後は、麻薬の何かがあるのだ!

白い粉に国家の政略

阿片という武器

最近の日本で、静かなブームを呼んでいるもの——もちろん、加山雄三やサッカーではない、麻薬と梅毒であるという。

北鮮スパイ事件のひんぱんな発表が、一向に〝危機感〟を起さないように、麻薬や梅毒のまんえんが、危機感を呼ばないのは、その潜行性の故であろうが、さきごろのカメラの大手メーカー、ヤシカ専務とその一味の麻薬事犯ほど、世の警鐘となったものはあるまい。

治安当局のある麻薬担当官は「日本の麻薬禍は、上流階級と底辺層とにまんえんしつつある」といっているが、ヤシカ専務事件が、それを雄弁に裏付けてくれる。芸能人や高級コール・ガールを媒介として上層階級に侵透しつつある「麻薬」とは、一体、何であろうか。梅毒と並び称されながらも、その背後関係をみる時「麻薬」のもつ、国際的、思想的、政治的な謀略性は、「梅毒」の比ではないことは、明らかである。

セックス、酒、と博、麻薬などによって人間の弱点に喰いこむ「外国人獲得法」が、ソ連秘

密機関では「科学の段階」にまで高められているという。まず、身近かな実例で「麻薬」に対しては、常に国家の意思がつきまとうということを、実証しなければならない。