長期信用銀行が、中央観光に融資したのは四十一年。麹町税務署が同社箱根事業所を税金の未納で滞納処分にしようとした時、急拠貸しつけられたものという。東海銀行の融資態度と共に、疑惑がもたれるのも当然である。
三信商事は、市中金融業者説があるが、〝実はある相互銀行のトンネル会社。金利は銀行並み〟(中央観光大矢事業対策部長)というのだが、裏利が付きもののトンネル会社なら、貸金業者とみても間違いない。清水建設の債権は本社ビル(千代田区平河町)改築工事の未払代金である。
倒産理由について、大手債権者の東海銀行はこういう。
「箱根を建設した後、本社ビルをムリして取得、改築した。この費用が約一億八千万円。また、南房計画は、当行としても反対していたが、結局遅延してムダな経費をかける始末となった。
箱根の方だけをガッチリ固めてゆけば、月間平均約一千万円の収入があったのだから、何とか破タンを来たさずにやれた筈」
しかし、五月から二カ月余にわたって調査していた栗田氏は、
「中央観光の場合、サギ倒産の疑いが極めて強い。箱根だけでは明らかに収容不可能と判る過剰な会員を集め、一泊五百五十円とうたっても実際には二千円以上にもつき、決して安くはない。また会員預り金や負債などから推定すると二億円以上の使途不明金がある」という。
小島社長をめぐる黒い噂はまだある。乱脈な経営からの役員連中の内紛、五十嵐某の乗取り事件、四十三年二月に爆発した同社労組員の不当解雇、さらに「逓信運輸協会」事件など同社の
メチャクチャな内情、小島社長の放漫経営ぶりを伝える例は余りに多い。今まで表面化した「政治家と結んだ虚業家」の他のケースと同様に、本人の過去、経歴が明らかでないという点でも一致している。
小島社長は福岡県田川の出身といわれ、新報知新聞、京浜ゴルフ常務という略歴が、公式にいわれている。某新聞社営業部、京成電鉄などにも在籍したとの説もあり謎の部分が非常に多い人物だ。
さて、問題は会員からの預り金で、中小企業からかき集めた金は入会保証金、維持会費の二本立てになっており、入会保証金は三年預り(南房の場合、個人会員五年と十年)の建て前である。
小島社長の放漫経営をめぐる黒い噂について、「会員預り金」の持つ意味が大きいだけに、栗田氏の指摘する「使途不明金二億円以上」とともに、今後徹底的な究明がされなければなるまい。
デビ夫人が「パパ」と呼ぶ人
さて、こうして、各種のケースを眺めてみると、〝政治家と結んだ虚業家〟の像が、ハッキリと浮んでくる。旧聞だが、スカルノ氏にミス明眸金勢さき子さんを献じた木下商店や、それ を真似たデビさんの東日貿易久保正雄社長なども、好適例であろう。そして、デビさんは、やがて川島正次郎氏を〝パパ〟と呼ぶようになる。