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最後の事件記者 p.026-027 文春に私の立場を書こう

最後の事件記者 p.026-027 逮捕、拘留されている安藤は、取材の盲点である。私とて同様だ。それならば、私の手記もまた、安藤の手記と組まして、十分に価値があるはずだと判断した。
最後の事件記者 p.026-027 逮捕、拘留されている安藤は、取材の盲点である。私とて同様だ。それならば、私の手記もまた、安藤の手記と組まして、十分に価値があるはずだと判断した。

社へ行って後始末をしていると、辞表は受理されることになり、明朝の重役会を経て発令されるという。警視庁も、それを待って、二十二日正午に出頭しろといってきた。これですべては決ったのだった。私は当然の別れになる、銀座の街を歩いて帰宅した。

文春記事のいきさつ

その結果の、私の逮捕記事であった。どのように真実を伝えたか、どうかは別項にゆずって、私は厳しい批判を受けていることを、留置場の中で知ったのである。

私が編集者ならば、やはり同じように安藤の手記をとろうとするに違いない。文春は発行部数、数十万という大雑誌だ。ケチな新聞よりは読まれている。その雑誌が、九月号に引続き、九月上旬発売の十月号でも、安藤組を取りあげようとしている。

逮捕、拘留されている安藤は、取材の盲点である。私とて同様だ。それに着眼して弁護士を通じて、手記を取ろうとする編集者に感服すると同時に、それならば、私の手記もまた、安藤の手記と組まして、十分に価値があるはずだと判断した。

——そうだ。文春に私の立場を書こう。

私はそう考えると、差入れに通ってくる妻への伝言を頼んだ。接見禁止処分だから、会うことは許されない。

文春の編集部には、何人かの知人がいる。私が手記を害きたいという意志を伝えておいて、それが採用されるならば、あとは〆切日ギリギリまでに、保釈で出ればよいのだ。私は調べ官に、妻に〆切日を聞かせてほしい、と頼んだ。

〆切日は、安藤の手記が二十日だというから、二十五日ごろと考えた。妻の返事によるとやはりそうだった。私は房内ですでに想を練りはじめた。新聞ジャーナリズムが、私に機会を与えないならば、雑誌ジャーナリズムによるのが一番だ。

新聞は長い間、マスコミの王座に君臨し、いわば永久政権として安逸をむさぼってきたのである。これに対し、雑誌をはじめ、ラジオ・テレビと、他のマスコミが、その王座をおぴやかしはじめている。いろいろの雑誌に新聞批判の頁が設けられていることが、それを物語っているではないか。

私は安藤の相談に対して、「ただ申訳ないと、謝らなければいけないよ。そして、横井が悪い奴ならば、その悪党ぶりをバラしてやれよ」と、答えておいた。