私が、その後に〝取材〟したところでは、彼女は、「ホテルの副社長」であった。と同時に「社
長夫人」でもあった——。
つまり、レストランの営業不振に、直接、陣頭指揮に乗り出してきた、という次第だった。
女の子もイキイキ
かつ由が、チーフの退職を機会に、「レストラン・ラステンハイム」に変わって、サンライトの不振時代のマネージャー・チームが参加した、という〝現象〟の面から、〈新聞記者的第六感〉を働かすと、このふたりの女性の在り方に、ナニか、関係がありそうなのである。
かつ由のオカミさんは、美人とはいえないが、可愛いタイプで、それなりに、チャーミングである。
サンライトのマダムは、美人であって、これまた、笑顔が魅力的だ——一方が、味噌汁とお新香をやめて、気取ってみたら、相当な改造費をかけたのに、客足が遠のき、他方が、気取りを捨てて、味噌汁とお新香を出して、千客万来である。
私が、〝女の戦い〟を想定するのも、理の当然ではないだろうか。
かつ由のママは、私の忠告を容れて、チーフを迎えに行ってきた。
新装開店から一カ月。レストラン・ラステンハイムは、「お客さま方のご要望により、むかしの、かつ由にもどらせて頂きます」と、貼り紙を出した。
客はまた、かつ由にもどってきた。チーフは、和風ビフテキを焼き終わると、キッチン場から
ノコノコと出てきて、馴染み客の相手をして、ビールを乾した。
ママは、キャッ、キャッと、明るい嬌声を上げながら、レストラン風のテーブルの間を、蝶々サンのように、飛びまわっていた。ズーッと居付いている女の子のカコちゃんも、レジの前に神妙な表情で控えているのをやめて、料理を運んでは、イキイキとしてきた。
新宿の街とは、やはり、そんなとこなのである。
新聞記者とコーヒー
珈琲ならグループ
地元の医大通りに入りながら、ものの十メートルほどのところで、すっかり手間取ってしまった。先を急ぐとしようか。
牛やから百メートルほども進むと、右側にグループという、コーヒー店がある。四、五人ほどのカウンターと、五、六卓ほどの小さな店だが、若いマスターがたててくれるコーヒーが、なんとも旨いのである。
店はせまいし、椅子とて、決して坐り心地が良いわけではなく、客は付近の常連で、高話の声
がうるさく、落ち着けないので、本来ならば、キライな部類に属する店なのだが、コーヒーの美味さにひかれて〝グループ詣り〟なのである。