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黒幕・政商たち p.054-055 友成課長補佐は「失念した」と

黒幕・政商たち p.054-055 各社の商売のウマ味とその儲け、さらには、予想されるリべートの額などは、全くの手がかりすらつかめないのであった。〝専売一家のカべ〟である。
黒幕・政商たち p.054-055 各社の商売のウマ味とその儲け、さらには、予想されるリべートの額などは、全くの手がかりすらつかめないのであった。〝専売一家のカべ〟である。

米葉協会加盟十五社以外は米葉輸入ができないということは、十分に独禁法違反の疑いがあ

るのだが、それを米ディーラーの代理店という形でカバーしており、専業十社のうちでも、それを肯定している社もある。

さらにまた、友成課長代理は「専業十社というのは良く知らないが、明治時代の岩谷の〝天狗たばこ〟以来の実績商社だときいており、そのたばこ民営時代からの貢献度で、公社が認めたといわれているが、伝聞だから責任はもてない」とも洩らしている。

私が調査してみると「専業十社」の中に、さらに「七葉会」なる組織があり、いずれも米葉輸入のみに依存している商社であった。公社は米国ノース・カロライナ州ラーレイに買付事務所を設けているが、公社の買付値、米葉協会商社(シッパー)の輸入値、公社の買上値と、米葉輸入をめぐる疑問(注、政治資金とのつながり)を解くべき数字は、関係者のいずれもが明らかにしようとしない。

公社(JMC)は、シッパーであるアメリカのディーラーと契約を結ぶ。その間に、インポーターであるエージェントの日本商社が、JMCから受けるマージンは、友成課長補佐は「失念した」というが、〇・五%にすぎない。しかし、インポーターがシッパーから受け取るマージンは、二~三%といわれるが、専業十社筋では、「数字は公社のインフォメーションを通して受取ってほしい。私たちが明らかにすると、公社のお叱りを受ける。友成氏が忘れたというのなら、私も忘れた」と、一切を明らかにはしないのである。

前述の数字は、米葉協会加盟外の商社筋の観測だが、同筋では米葉以外では、「葉たばこの輸入は、それほどウマイ商売ではないが、製造たばこの規格が、国会の議決で決るのだから、一度使用された葉は、一定量は毎年安定した数字の商売として輸入できる点が取り得だ」という。では、何故、米葉はウマイ商売なのだろうか。第一には、まず量が極めて多いということである。第二には、業者が指名登録によって、レギュラー買付だけなので、固定した利権と化しているからである。従って、社員も少数、事務所も小さく、但し、公社の〝外郭団体〟として、役員は多いが、これは止むを得ないことだ。ワン・フロアー・カンパニーと称される所以でもある。

〝専売一家〟の厚い壁

では、十五社の何処が、幾らで、何をどの位輸入しているか? という点になると、通産省の極秘公文書である「輸入インボイス」の数字を取らなければならない。業者が「数字は公社で……」と、伏せて、公社がトボけてしまう現状では大蔵省統計の通関実績表の合計数字しかなく、各社の商売のウマ味とその儲け、さらには、予想されるリべートの額などは、全くの手がかりすらつかめないのであった。〝専売一家のカべ〟である。

どうして、リベートが予想されるかというと、〝大統領の密使〟ミス・コーラーに続いて、

マカパカル派の上院議員、ミスター・デュモンが飛んできて、ホテル・ニューオータニに陣取り、具体的に数字をあげて、フィリピン・ヴァージニア葉の売り込み工作を積極的に展開したからであった。

黒幕・政商たち p.056-057 関係者たちのフトコロに入る

黒幕・政商たち p.056-057 もっと平たくいえば、この、円の二〇〇円は、日本側の工作資金、政治資金にして、どうぞ御自由にお使い下さい、という内容を示してきたのである。
黒幕・政商たち p.056-057 もっと平たくいえば、この、円の二〇〇円は、日本側の工作資金、政治資金にして、どうぞ御自由にお使い下さい、という内容を示してきたのである。

どうして、リベートが予想されるかというと、〝大統領の密使〟ミス・コーラーに続いて、

マカパカル派の上院議員、ミスター・デュモンが飛んできて、ホテル・ニュー・オータニに陣取り、具体的に数字をあげて、フィリピン・ヴァージニア葉の売り込み工作を積極的に展開したからであった。

それによると、米葉は一口にいって、キロ当り八〇〇円(昨年度通関実績の千五百六万キロでみると、七百三十二円強である)だが、フィリピンはキロ四〇〇円という半値だ。しかも、そのまた半分の二〇〇円をドルで支払ってもらいたい。残り二〇〇円は円で、日本物資の買付けにあてるということ。もっと平たくいえば、この、円の二〇〇円は、日本側の工作資金、政治資金にして、どうぞ御自由にお使い下さい、という内容を示してきたのである。

この数字を実際の数字にあてはめてみると、フィリピンからは三十八、九両年度は葉たばこの輸入がないので、三十七年度二万一千キロで六百十七万九千円、キロ当り二百九十四円、四十年度(八月まで)五万四千百六十キロで一千七百三十九万三千円、キロ当り三百二十二円。四十年度の米葉七百五十二円に比べ、四割三分に当るから、半値のキロ四百円というのは、まずはマットウな数字ではある。しかし、そのまた半分は、日本側にリベートするというのだから、葉たばこ商売の実態が、この辺で大よそつかめようというものである。

事実、ノース・カロライナのあるタバコニストは、マニラにも傍系会社をもっている。もともとフィリピンのヴァージニアはその名の示す通り、ヴァージニアの葉たばこを移植したもの

である。アメリカのタバコニストが、フィリピンで同じ商売をしていることに、何の不思議もないし、商習慣も同じとみるべきであろう。つまり、米葉のキロ当り八〇〇円という数字は、どの程度の、必要経費を含んだ数字であるかということである。

もし、この〝大統領〟の示す条件で、米葉の全量を比島に切替えたとしたら(製造たばこの味など無視した上で)、三十九年度の千五百六万キロだから、ドルを四分の一に節約できた上に、三十億一千二百万円のリべートが関係者たちのフトコロに入る勘定になる。その上、通商条約の批准も行なわれるという次第だ。

これは決して荒唐無稽な笑い話ではない。葉たばこは、農作物であるから、アメリカ政府は農民保護のため、余剰農産物として、葉たばこをも価格調整のために買い上げたのちに、安く放出するのである。業界筋の情報によると、この安い政府放出の葉たばこを抱えた、オースチンというディーラーが、三十八年に日本でしきりに暗躍していたと伝えている。そして、三十九年の通関実績は、前年を三十万キロもオーバーしているのである。これらのナゾを解いてくれるものは、通産省にある輸入インボイスの商社別の数字だけである。