「公団と地主の間には、ある会社がクッションになって入っています。ホテルニュー・ジャパンの中にあるその会社の社長というのは、ある金融機関の支店長だった男です。そして、彼
が、その土地を、半年でも一年でも持っていて、公団に売ったというのなら、まだよろしいでしょう。しかし彼が所有していたのは、僅かに一日間だけです。土地の広さですか? 坪六千円の土地で、総額十数億円にのぼる面積です。そして、彼はその土地のある農協から十億もの融資を受けているのです」
公団から地主たちに支払われた金は、彼の会社を通して、農協に預金され、そして彼は、その金を農協から融資してもらっている。
「だが、ニュー・ジャパン内のその会社は、融資をうけるやいなや、煙の如く消えてしまったのです。ホテルの交換台は、その部屋の主が、〝出発〟してしまったと告げるのです。……一体、十億という金を借り得る会社が、そんなに簡単に消減してしまうものでしょうか」
固有名詞が、公団とホテル名以外は、すべて伏せられているので、読者はこの話を、にわかには信じ難いと思うかも知れない。
しかし、公団の宅地買収に関する限りは、このようなミステリーは、日常茶飯事である。坪六千円ならば、三十万坪で十八億円。しかし、倍の値段で買上げているので、十八億では約十五万坪しか買えない。そして、九億ほどの金が、地主以外の連中——公団に売り付けた幽霊会社や、公団をめぐる政治家をはじめとする〝黒幕〟たちのフトコロを肥やしているのである。
また、農協に対しては導入預金だ。地主に渡った約九億円の金の大部分が、農協に入り、そ
の金はまた、幽霊会社へ還元されている。一体、誰がこのようなミステリーの脚本を書き、誰が演出しているのだろうか。そして、また、その金の行方は?
「私が研究した限りの税法では、このような取引は、考えられないのです。そのため、すべての〝悪〟をひっかぶって蒸発してしまう会社が必要なんです」
彼の話は、まだえんえんと続くのであるが、信じきれない読者のために、まず一つの「事実」を示さねばならない。
光明池事件のウラのウラ
ここに一通の公文書がある。昭和三十八年七月二十日付で、日本住宅公団の三人の監事の連名による、日本住宅公団総裁挾間茂にあてた、監査報告書だ。その全文を紹介しよう。
大阪支所の監事監査結果について
先般、大阪支所の監査を行いましたその結果は、別紙監査書の通りでありますので、御通知いたします。以上。
日本住宅公団監事 武井良介
川合寿人
〔宅地部関係〕 大庭金平