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黒幕・政商たち p.048-049 葉たばこのリベートが河野の利権

黒幕・政商たち p.048-049 河野の強引な資金造りについては、警察では相当の情報を握っていたのだが、その御馬前で〝討死〟したのが、自分たちの先輩平井学であったからだ。
黒幕・政商たち p.048-049 河野の強引な資金造りについては、警察では相当の情報を握っていたのだが、その御馬前で〝討死〟したのが、自分たちの先輩平井学であったからだ。

〝中毒患者〟の実力者

フィリピンからの密使

ある警察の高官が、座談の中でこうもらした。「河野一郎の〝遺産〟を佐藤栄作に〝相続〟させてやらねばとその男はいうンです。思わず、エ? とききかえすと、タバコですよ。葉たばこのリベートが河野の利権だったことは、御存知でしょうが……と、いうンです。この男が、〝怪人物〟でしてネ」

彼は、そこで言葉を切って、心持ち肩をすくめてみせた。海外勤務の名残りであろうか。警察で外務事務官に出向して、海外へ出るのは、エリートに限られている。

三十八年の総選挙にからんで、「平井学事件」というのがあった。

警視庁総務部長から、河野一郎に招かれて、建設省へ転じ、官房長にまで進んだ内務官僚のホープだった人。これが同じ内務官僚の先輩で、大阪府警本部長から建設省入りをし、河野派として三重一区から出馬した、山本幸雄自民党代議士のために、建設省出入りの橋梁業者たちから、運動資金六百三十万円を集めたという事件を起した。

当時、「河野は平井まで射落したのか」と、その建設省入りは、内務官僚たちに大ショックを与えたものだったが、この事件となるに及んで、その反応はさまざまであった。というのは、河野の強引な資金造りについては、警察では相当の情報を握っていたのだが、その御馬前で〝討死〟したのが、清廉潔白をもって鳴っていた自分たちの先輩平井学であったからだ。

「真偽のほどは判らないですよ」と、念を押す、その某高官の話は、平井学事件が生々しいだけに、河野一郎の名前が出ると肩がすぼまるのであろうか。こうして、ヴァージニア葉にまつわる、〝黒い疑惑〟を求めての、私の取材が始められたのであった。まだ、夏の日が、霞ヶ関の官庁街に、明るく輝いているころのことだった。

某高官が、私に与えてくれたヒントは葉たばこの輸入に関しては、何等かの形でリベートが動いているらしいこと。そして、その問題で動いている〝怪人物〟は、通称コバケンなる右翼系の人物——この二点でしかなかった。

まず、右翼系のスジで、〝コバケン〟なる人物の該当者を求める一方、通産、農林、大蔵の各省方面で、タバコに関する資料を漁りはじめた。その結果、明らかになってきたことは、タバコの買付、輸入に関しては、極めて〝情状〟が入りこみ易い仕組みであり、金額が莫大なので数字の上で確たる証拠をつかみ難いこと、そしてさらに、小林派選挙違反事件と同じく〝専売一家〟の厚いカベがあることを思い知らされた。だが、米葉の輸入に関しては、確かに、

〝黒いニオイ〟が臭うのである。