報知の内田、販売の片柳、ともに社会部出身。それぞれに、その下に渡辺の腹心を配置して、これ
また今期限りだろう。読売ランドもまた然り。
すると渡辺の野望は、これからどう展開するのか。
まず、倍額増資である。現在、読売の資本金は、六億一千三百万円だろう。一億五千三百万円だったのを、務臺が増資した記憶がある。
株主比率は、正力厚生会(理事長・正力亨)が、約四割、小林、関根、正力らの一族が約三割。務臺が二割で、残りの一割を役員たちが持って、社員株主は無くなっている、という。
読売の全資産は約一兆円。渡辺が増資を数回やれば、正力系では、現金がないし、また、作れないから、渡辺が金融能力さえあれば、正力家を超えて、オーナーになれる。
彼は、会長となり、乾分どもの社長を監視するだけ——まさに、覇道そのものではないか!
渡辺には、金に厳しいという評価のほか、女の話など、皆無である。その点は、中曾根にも、艶話がないのと、奇妙に〝暗合〟する。
だが、ここに、新しい問題が起きてきた。富士・東海銀行事件に登場する「荒川の運送会社」の正体が、暴かれ始めたのである。
平成三年十月三日の「週刊文春」誌の、「海外逃亡中の森本支店長代理、衝撃の独占インタビュー」がそれである。
《…出島運送は、富士銀行からも五百六十億円…特捜本部が注目している。
——出島さんへの金額は二百五十億と伝えられています。これは何回で?
『五、六回だと思います。出島さんはいろいろな政治家とか、税務署とかに力を持っているんです。読売新聞の運搬の六十パーセント以上を、彼のところの会社で握っているわけですから、読売にも影響力があるでしょう』》
この記事が出てから、読売紙面に注意しているのだが、「出島運送を切った」という記事は、まだ出ない。「週刊新潮」誌の指摘するが如くに、「新聞の宅配制度で、日本の知的水準が維持されている」と、豪語する渡辺社長として、この問題への対応は、ナゼか、緩慢である。
徳間書店を即座に訴え、氏家、丸山両名を、週刊誌の報道と同時に、追放した渡辺にして、出島運送問題の反応が鈍いのは、ナゼか。
富士・東海の融資額は、ザット八百億円以上に上る。まさか、読売社内でこのアブク銭に群がった人物は、いるとは思えない。
出島逮捕ののちに、そんな事実が出てきたら、渡辺・覇道社長の責任は免れないところであろう。
そしてもう一点。「週刊新潮」誌平成三年十月七日号が指摘する「新聞休刊日戦争」は、宅配制の崩壊と、合販制の必然を示唆している。十月七日の休刊をしなかった読売は、一部当たり三十円の手当てをだした。
一千万部を目前にした読売(九十一年・一月~六月平均ABC部数は、九百七十六万五千弱)は、務臺を失ったが、この部数が減少しはじめたら、これまた、渡辺・覇道社長の責任が問われよう。