
なお、ここで注目すべきことは、ハバロフスク、ウォロシロフ両地区は、誓約書の文面が、Ⓐ、Ⓑともに同文であり、しかも、一人の人間が、Ⓐ、Ⓑ両方の誓約書をかいていることである。これによってみても、さきに述べた通り、Ⓐの使命は一応シベリアで終わっているが、日本におけるⒷの予備隊として、必要とあれば直ちに編成され、〝影なき男〟の連絡がつけられるとみてよいと思う。
4 報酬 Ⓐは毎回五〇—七〇ルーブルというのもあれば(チェレムホーボ)、帰還の時にビール五杯だけ(タイセット)というものもあり、種々まちまちであって、いちがいにはいえない。これも、担当将校の人柄と、スパイの活躍如何によるものであろう。全期間一年半を通じて六回の呼び出しをうけ、最後に一二〇ルーブルを渡されようとしたが、不要だといったところ、受領証だけを書かされて、担当将校に横領された(チェレムホーボ)というのもある通り、機密費に類するものだけに、適当に行われていたようである。Ⓑにいたっては、月に一回の呼び出しがあり、その都度五〇—三〇〇ルーブルの大金を与えられていた(バルナウル)というのからも、相当莫大な金が、このスパイ組織のために費やされていたことが分かる。