何千万、何億という金が、使途不明になるということは、あまりにもバカゲているではないか。そして、今ごろはまた壮大な本社ビルを新築したミシン会社から、相当な金額の金が、Y
たちのグループに、流れ出しているにちがいない。
対外貿易でさえ、荷抜きが横行しているほど、商業道徳が地におちている時代とはいえ、企業内に詐術めいた部分を抱えた会社が、あまりにも多い昨今である。あなたの会社も、この新知能暴力団〝潜入屋〟に狙われてはいないだろうか!
第6章 九頭竜ダムの解けないナゾ
昭和四十三年。さる一月の総選挙、東京三区の候補者の一人に演説一本槍の男がいた。ポスターとハガキと演説、彼の選挙運動らしきものはただそれだけである。だから有力日刊紙も彼を〝ほうまつ候補〟扱いとし、選挙記事の中でも黙殺されてしまった。彼は叫ぶ。政局をおおう〝黒い霧〟は……この演説のマクラを聞いただけで、街頭の聴衆は散りはじめる。もう耳にタコのできた言葉〝黒い霧〟……。それだけで、彼は……。