総会屋が演出する華麗な舞台
一流財界人百名を動員
もう二年も前のこと——、誰にも祝福されずに生れた不義の子が、これまたソッと息を引き取ったというのに、墓を暴くようなこのテーマに、マユをひそめる向きは多いと思う。だが、マスコミに報じられることなく、政財官界のウラ側で、人々を一喜一憂させたこの「株式会社サイエンス・ランド」の、創立から、解散までの問題点は、やはり、誰かが明らかにしておかねばならないのだ。何故かならば……、
これほど、大義名分の立った立派な計画の詳細が、何故か、一度も活字にならなかったということは、そこに、何かの理由——圧力やモミケシなどの、公表できない問題がひそんでいるからだろう、と推理される点。
そして、スターとして舞台に登場した、百名もの〝一流財界人〟と、これを演出した人たちが、今の日本の、国のあり方に何かと影響力のある人物ばかり、という点。
このような理由で、私は、あえて、このテーマをえらんだ。
「青少年を取巻く社会的環境は、徒らなる亨楽本位の横行と、無責任な知識の撒布ばかりで科学或いは産業を、興趣深く体系的に学びとる施策は等閑視」されているので、「科学技術と産業の有機的関連を立体構成し、青少年の手でそれに触れ動かす実物教室と、健全かつ独創的な娯楽機関を配備し、家庭園遊のレジャー・ランドを形成」しよう(設立趣意書)というのが、この会社の事業内容である。当今流行の〝産学協同〟に、基本構想を求め、レジャーで大衆と結び、経営の基礎を得ようという、それこそ、立派なものである。
ところが、この会社は設立登記が終り、株式払込が完了して、一年も経っているというのに、まだ何の工事にも着手しなかった。イヤ、着手できないというのが正しい。その原因というのは、タダ一つ——この会社自体が〝政治問題化〟してしまったからである。
資本金十億円、建設予算二十二億三千二百万円といえば、大そうに聞えるが、今また問題となっている、東京第二空港に比べれば、政治問題としては、小指の先ほどのチッポケな問題である。それが、国会で取上げられ、〝政治問題化〟したというところに今の日本の社会構造——政治や経済のあり方がマザマザと浮び上ってくるのである。
平たくいえば、ハハンとうなずける暗示が見えかくれしていて、青少年のための産学協同展示どころか、青壮年のための、政財官界早分りのパノラマとして、この会社は早くもその〝教育的効果〟を発揮していた。