組合——社の事業や宣伝も程度問題ではないか。「正力コーナー」もいぜんとしてつづいている。〝どうにかしてもらいたい〟という意見が、組合員だけではなく、読者の間からも強く
出ている。
会社——会社の調査では、読売の読者のうち、〝社主の魅力〟でとっているのが四十%。〝巨人軍〟でとっているのが二十%で、〝記事が良いからとっている〟というのは、わずか五%ぐらいだ。
組合——〝記事でとっているのが五%だ〟というのが、編集の最高責任者の言葉とすると、あまりにひどい。これではみんな記事を書く気も、働く気もしなくなる。
会社——社主の魅力が大きい以上、そうした記事は扱わねばならない。批判的な読者の声もほとんど聞いていない。
組合——ともかく「正力コーナー」はやめてほしい。各職場からそういう声が強く出ている。
「組合ニュース」(六月十六日付、第11号)
驚くべき発言ではないか。これが、前にも簡単に触れたが、編集局長の「五%発言」なるものの全文である。会社、組合という立場の対話で書かれているが、この部分の見出しに、「これが編集局長の言葉か」とあるからには、読売を「記事でとっている」読者が五%という発言は、対話の内容からも、小島文夫編集局長の言葉だと判断される。
この〝五%問題〟は、組合ニュースで流された結果、重大な問題へと発展してきた。
一時は、小島編集局長の引責辞職、正力亨報知社長との交代説などまでが社内に流布されるな
ど、編集ばかりか、全社的な憤激をまき起したほどであった。しかし、十三号でともかく小島局長のクビがつながるだけの、会社側のカオを立て、十四号では、「十八日の交渉委で、会社側から陳謝」ということが報じられた。
「紙面で来い!」という、サッソウたるタンカに含まれるものが、すなわち、経営の姿勢と新聞の公器性である。そのためにこそ、編集ばかりか、工務、業務のあらゆる新聞人が、誇りと自負とを持って、真剣に働いているはずである。それが、「紙面が五%」というのであっては、その意味するものが、購読理由であれ、イメージ調査であれ、いずれにせよ五十歩百歩で、組合側のいう通り、〝記事を書く気も、働く気もしなく〟なるのは当然である。
さる二月十九日付、読売労組教宣部の「闘争情報」第一号によると、組合は、七千五百円の賃上げを会社に要求し、十八日に交渉委が開かれたことを報じている。この「闘争情報」は、号を逐って七千五百円アップ一本槍を呼号し、「スト権確立のための全員投票までを決定した」。いわゆる「春闘」である。
こうして、組合の闘争気運が次第に盛り上ってきた三月十七日、代表取締役専務務台光雄が、「所感」をもって、代表取締役副社長の高橋雄豺のもとに辞表を提出、慰留をさけるため、そのまま居所をくらましてしまうという、いわゆる「務台事件」が起ったのである。所感は、極めて含蓄の多い、次のようなものであった。