読売梁山泊の記者たち p.240-241 間違いなく河井の自宅の電話番号

読売梁山泊の記者たち p.240-241 宇都宮代議士が、品川の赤線業者からワイロを取るであろうか、という、卒直な疑問である。私は、もう一度、河井検事に確かめるべきだと主張し、立松も、それを入れて、再度、河井の自宅に電話した。
読売梁山泊の記者たち p.240-241 宇都宮代議士が、品川の赤線業者からワイロを取るであろうか、という、卒直な疑問である。私は、もう一度、河井検事に確かめるべきだと主張し、立松も、それを入れて、再度、河井の自宅に電話した。

《(注=その記事後半部分)当局では三幹部(引用者注・鈴木明全性理事長、山口富三郎同専務理事、長谷川康同副理事長)を全性本部が全国ブロックに呼びかけて地元毎に政界工作にあたらせた参謀とみて、まず同本部の心臓部である東京都連——地元(東京出身議員)を結ぶ汚職ルートに摘発のメスを入れることに決定、捜査の結果、真鍋代議士についで、宇都宮、福田両代議士にいずれも二十—五

十万円の工作費がおくられている事実をつかんだ。

ワイロの手口としては、三幹部の指示により、地域別の業者を〝政界工作員〟として、めざす議員の巡りに一人または二人ずつつけ〝運動〟したのち手渡していたとみている。(中略)このほか地元出身のK、S、Nの三代議士についても、同様の丸済という印がつけられているので、その裏付け捜査を急いでいる。(後略)》

K、S、Nは記事の中でもイニシアルだけの扱いになっている。これは滝沢の助言を入れて、立松が大事をとった結果である。(注=九人のうちのクロっぽい五人の残り三人)

《両代議士は翌十九日、名誉毀損の訴訟を東京地検に提起した。告訴の対象は、読売新聞社小島文夫編集局長および問題の記事を執筆した記者某、これに情報を提供した検事某およびその監督者としての東京地検野村佐太男検事正、および検察最高責任者である花井忠検事総長の五人であった。

彼を指揮命令する監督者責任を合わせて問うのであれば、東京地検の検事正と検事総長の他に、もう一人、東京高等検察庁の検事長も告訴しなければ筋道に合わない。

しかし、故意か、偶然か、東京地検の上級機関である東京高検の検事長は告訴の対象からはずされており、その職にある岸本義広が被告訴人に名を連ねていないという理由で、東京高検を指揮して、この告訴事件の捜査に乗り出すのである。》

本田の「不当逮捕」は、以上のように、誤報が読売社会面のトップ記事になる経過を、詳しく描写

している。なお、引用文中に「…」とあるのは、中略部分を意味している。

最後のツメに、河井検事の自宅に電話する部分は、一階の電話ボックスに行って、私と滝沢が立ち合ったもので、室内電話ではない点が違うだけだ。

というのは、宇都宮代議士は、私が国会担当時代、取材で人柄を知っており、赤線業者のワイロを受け取る人物ではないと、疑問を提起したからで、それなら、河井にツメてみよう、ということになったのである。

司法クラブのキャップである私は、立松の話を聞いて、フト、一抹の不安を覚えたのである。宇都宮代議士が、品川の赤線業者からワイロを取るであろうか、という、卒直な疑問である。

もっとも、立松は社会部長直轄の遊軍で、私の部下ではないから、彼の原稿で、私の責任は生じない。しかし、親しい友人の立松に赤恥をかかせるわけにはいかない。

五人のうちの〝クロっぽい〟二人について私は、もう一度、河井検事に確かめるべきだと主張し、立松も、それを入れて、再度、河井の自宅に電話した。彼が、私と滝沢の見守る中、間違いなく、河井の自宅の電話番号をまわした。

政治的思惑で立松を利用した河井検事

そして、本田の最後の部分、「岸本が告訴洩れになった」ことについて、「故意か、偶然か」と、表現しているが、司法記者の常識として、一流日刊紙の名誉毀損被疑事件で、担当記者が逮捕されるこ

となど、あり得ないことであった。