「まァいらっしゃい。元気で安心したワ。また、〝常に正義と真実を伝える読売新聞、天下四百万読者を有する読売新聞〟が、聞けるわネ」
女の子たちは、そういって集ってきた。私の酔えば必ず口にするこのキャッチ・フレーズは、有名である。そうして、私の行くバーの女の子たちは、大かた読売の愛読者になった。
私は一月ぶりのアルコールに、僅かばかりのビールで泥酔した。女の子たちは面白がって、キャッチ・フレーズの下の句が出るぞと期待したらしい。
「読んだあと御不浄で使える読売新聞、もんでも穴のあかない読売新聞、ふいても活字のうつらない読売新聞! 読売新聞をどうぞ」
読売記者でなくなった私は、とうとう、この下の句を叫び出していた。女の子たちは私の健在に拍手をしてくれた。私はやはり、根っからの社会部記者である。
p.215 最後の事件記者 トビラ