最後の事件記者 p.424-425 幹部サンやオバさんではお断りだナ

最後の事件記者 p.424-425 その子は眼の下のホクロが色白の肌に鮮やかで魅力的だ。こんな妄想にふけっていたのも、やはり、支部サンに喝破されたように、もって生れた色情のインネンらしい。
最後の事件記者 p.424-425 その子は眼の下のホクロが色白の肌に鮮やかで魅力的だ。こんな妄想にふけっていたのも、やはり、支部サンに喝破されたように、もって生れた色情のインネンらしい。

幹部婦人の愛欲ザンゲ
その当日、幹部サンと導き親のオバさん、それにもう一人、佼成会青年部の妙齢の乙女と三人が、連れ立って本部からそのアパートへやってきた。
儀式が終ってから、幹部サンはやがて法話のひとくさりをはじめたのであった。その法話も、

いつかザンゲに変っていた。

「これでネ、私も色情のインネンがあってネ。一度では納まらなかったのですよ」

優しい調子でこんな風に話しはじめた幹部サンは、彼女の悲しい愛欲遍路の物語をはじめた。富裕な商家の一人娘に生れた彼女は、我儘で高慢に育った。年ごろになったころ、同郷の知人からあずかって、店員として働いていた青年に恋をされた。

しかし、気位が高くて、店員なんぞハナもひっかけなかった彼女の態度に、その青年は破鏡の胸を抱いて故郷へ帰っていった。

「あとでそのことを知ってネ。私の色情のインネン、そして、そのごうの深さに恐ろしくなりましたよ」

最初の夫との結婚話、それに失敗した第二の結婚、そして、いまの生活——それは、彼女の性欲史であった。彼女のその物語は、もう窓辺に宵闇をただよわせている部屋の薄暗さと相俟って私は何かナゾをかけられているのかナ、とも考えたりした。

他人に恋心をよせられるのも、再婚するのも、浮気するのも(とは彼女は口にこそしないが)、すべてこれ、色情のインネンのしからしむるところだという。そのごうから逃れるための修養だというが……。

「しかしネ。なかなか修業が足りなくて……、あなたも、熱心に修業しなくちゃあネ」

色情のインネン、妙佼先生のお手配、新しい奥さん、等々。私は正座してうつむき、抜けかけ

た膝をみつめ、ジュズをにぎってそんなことを考えていた。その視線の中に、隣にならんで坐っている、女子青年部員の、紺のスカートと、発育したモモとか入る。

美しい部類に入るその子は、眼の下のホクロが、色白の肌に鮮やかで魅力的だ。

——彼女に、色情のインネンはないのだろうか。この子が、妙佼先生のお手配で、オレのものになるのかナ。幹部サンやオバさんではお断りだナ。

こんな妄想にふけっていたのも、やはり、支部サンに喝破されたように、もって生れた色情のインネンらしい。帰社すると、夜は銀座の紳士、昼はウラぶれた失業者。こんな二重生活が一週間余りつづいて、潜入ルポができ上った。

今でも、新宿から中野あたりを通ると、私の二人の相手役女優——オバさんとホクロの乙女を想い出す。

教祖の身元アライ

この立正佼成会キャンペーンは、正直のところいって、邪教という結論も出せなければ、叩きつぶして解散させるということも出来なかった。佼成会側の読売不買運動も、地域的には成功したが、「読売を見ると眼がつぶれる」という宣伝も逆効果となって、信者の中に〝憎読者〟もでき、読売はかえって部数がふえるという結果だったから、いうなれば読売の判定勝ちというところであった。