正力松太郎の死の後にくるもの p.222-223 日本工業新聞社は資本金十億円として再発足

正力松太郎の死の後にくるもの p.222-223 日本工業新聞といえば、俗称〝ポン工〟とよばれる、その世界での三流紙である。日刊工業新聞という、超一流紙が、日本経済新聞とは別の意味の読者を確保して、九段下に威容を誇るその社屋とともに、頑張っている。
正力松太郎の死の後にくるもの p.222-223 日本工業新聞といえば、俗称〝ポン工〟とよばれる、その世界での三流紙である。日刊工業新聞という、超一流紙が、日本経済新聞とは別の意味の読者を確保して、九段下に威容を誇るその社屋とともに、頑張っている。

女子供用には、政治も経済も社会もない。いうなれば、完全な娯楽週刊誌の、日割り印刷物である。男用には、「連日世論調査」「行動する論説委員」「社説ではなく主張」の三本の柱がある。

これが〝ありきたりでない紙面改善〟の中身である。

やたらと、小組みや囲いもの(注。ケイ線で記事を巻いた小記事や、紙面をケイで区切った中記事のこと)が多くて、凸版の見出しやカットがふえて、全紙面を眺め終ってみた印象は、どうしても、「週刊誌」化の一語につきるようである。

新聞が、週刊誌のマネをしだした——これは重大なことである。そればかりではない。サンケイをめぐる情勢は、朝日、読売の超巨大紙化のアオリをうけて、極めてキビしいものとなってきている。

さる四十四年七月一日付で、資本金五百万円の日本工業新聞社(サンケイ系列)が、一躍、十億円の大会社に変ったことである。これを報じた日本新聞協会の機関紙「新聞協会報」の記事をおめにかけよう。

「日本工業新聞社は一日から資本金十億円の新会社として再発足するとともに、海外経済ならびに技術情報や新製品情報の充実など、大幅な紙面刷新を行なった。

これは、資本自由化の新時代に必要な産業情報を、各界の職場で働く人のため提供しようという趣旨で、〝仕事に役立つ総合産業紙〟をめざして行なわれたもの。

紙面刷新の主な内容は、①第四、第五面の見開きを、海外の経済、技術に関するワイドページ

とする。②流通面、労務面のページをそれぞれ週三回、週二回新設し、欧米式の合理的なマーケット技法や人を使うための人材情報を豊富にする。③新製品の紹介を充実させるため、編集局内に新製品室を設置、各メーカーから新製品に関する案内を集める、などとなっている。

新会社の社長には従来どおり、鹿内信隆氏が就任、これまでの資本金五百万円の日本工業新聞社は、日工出版局と名前を変えて、同社の出版業務を継続する。」(7・1付同紙)

こんな唐突な〝発展〟の記事が、素直にのみこめるであろうか。日本工業新聞といえば、俗称〝ポン工〟とよばれる、その世界での三流紙である。ここでは、すでに、日刊工業新聞という、超一流紙が、日本経済新聞とは別の意味の読者を確保して、九段下に威容を誇るその社屋とともに、頑張っている。

新聞という事業は、金さえあれば〝商売〟になるものではないことは、すでに幾度にもわたって述べてきている。従来から、すでに〝人〟を得ていない〝ポン工〟が、資本金を一挙に二百倍にしたからといって、それなりに(それに見合うだけ)〝発展〟するものではない。

第一、ここに報じられた「紙面刷新」なるものをみても、金をくう〝刷新〟は何もないようである。そして、機を同じうして、親会社サンケイの一部局で発行されていた、タブロイド版の、サラリーマン向け夕刊紙の「フジ」が、これまた独立して、フジ新聞社となったのである。