立証している。
写真撮影は、戸外で行われるのと、室内と、その時の状況で違っている。
『ある日、医務室からソ連軍医の迎えがきた。黒いカーテンのかげから、黒メガネ、口ヒゲの一面識もない男が出てきて、〝ヤア、久し振りですね〟と、ニコヤカに日本語の挨拶を投げた。いぶかる私の前で、その男は静かにメガネとヒゲを取り去った。そこに現れたのは、誓約書を書かされた時のあの少佐だった。少佐は鄭重に〝サア、写真を写しましょう〟と、事の意外さにぼう然としている私をうながした。私は正面、横向きの写真を撮影されてしまった。この写真のため、私はもはや永遠に、影なき男の銃口から離れられないという、強い印象をうけたのだった』
写真撮影の状況を、〝影なき男の恐怖〟におびえる某氏は、このように筆者に向かって告白している。さらにこれを裏付けするために、ここにバルナウルにおける状況を説明しよう。別図のように、誓約書をかかせるには、街角から自動車にのせて、かなり遠いA公園の森の中で行い、写真撮影には、一たん収容所司令部に入ってから、車庫と便所の間を通り抜け、B公園の林の中で行っていた。写真は正面、左右両横面、上半身と四種類を写す。