四、連絡
こうして生まれた、このスパイ組織は、どうのように動きだしただろうか。その連絡についてみてみよう。
1 符牒 第一番にあげられるのは工作名(偽名)である。これはⒶ、Ⓑともに持っているが、Ⓐの中にはない者もある。この名前が、どのような根拠によって、名付けられるかは不明であるが、苗字だけが必要であるらしく、名前はそれほどでもないらしい。大矢(口頭でオーヤといわれて、本人が字をあてたもの)と名付けられた男が、『カーク・イーミヤ?』(名は何というか?)と質問したところ、チョット考えて『サブロー』と答えた(タイセット)という。工作名は、誓約書の末尾に記される。報告書、答申書、報酬の受領証など、一切の仕事にこの名前だけが使われる。例をあげると、阿部正(チェレムホーボ)、坂田栄、高平保(ハバロフスク)、森、大木(ウォロシロフ)などである。
合言葉はⒷにだけ、誓約のさいに、偽名に続いて与えられている。合言葉には次の三種類がある。
イ 呼びかけ式
『貴方の事業は成功していますか?』
『貴方の健康は宜しいですか?』