このパンフレットの文章構成は、露骨に我田引水を主張せず、「白紙になれば(審議会の公園貸付け決定処分が)、この六万坪の国有地には日本住宅公団が出資を申請しているので、そ
の通りに決るかも知れません。(中略)もちろんこのほか、神奈川県が放棄すれば、学校敷地に欲しいという声も各学校から出ております。たとえば、隣りの相模工業学園は、四十年一月二十六日、払下げ申請を行いました」(パンフレット第十一、十二頁)という具合に、ランドよりこの方が公共性、教育性があるじゃありませんか、と、巧妙な主張をしている。
「政治的」は「法律的」に通ず
〝巧妙〟というのは、同六十二頁から六頁にわたって、田川議員は大蔵省管財局長である江守説明員を吊し上げている。三十九年十二月の衆院地方行政委の議事録である。
「そこでもう一つ聞きたいのは、住宅公団のいわゆる住宅と先ほどあなたが営利事業といわれたサイエンス・ランド株式会社とは、どちらが一体公共性を持っておるかお伺いしたい」と、田川議員は質問している。その前には、「さらにもう一つお伺いいたしますが、株式会社サイエンス・ランドは、営利事業であるのかないのか、これをお伺いしたい」と質問したのちの、この質問である。
文字をみても、住宅公団と株式会社ではないか。田川質問は、それから長々と、六万坪を住宅公団にせよといわんばかりに続き、公団の代弁者——利益代表人の如き質問を行っている。
これが我田引水というのだ。
相模工業学園という、学校法人でありながら、手形を乱発している経営不良のブローカー会社のようなものでも学校とつけば教育といえる。これに三万坪を払下げた審議会の処分内容を調査するのが、政治家の本道と思われるが、そんな学校にさらに六万坪を払下げるべきだといわんばかりの、文章構成なのである。もっとも、この学校のことは、国会では何も発言していないのだから、ランド反対論の構成上のアクセサリーということはすぐ読めよう。
住宅公団——土建業者——河野派資金源という、いまわしい予感は、さきの平井学建設省官房長事件を想起するまでもなく、誰の胸にも浮んでくることである。警察官僚のホープであった平井学氏が、河野建設相に登用されたことから、後輩の警察官に取調べられるという事件は、検察の長老岸本義広議員が、大野派であったからとはいえないにしても、後輩の検事に起訴された事件とともに、感銘深い事件である。後者の選挙違反に対し、前者の汚職という点に、田川議員の住宅公団促進論が、ランド反対の大義名分を失わせているのを、惜しまねばならない。
第三点は、このパンフレットによって、出来るだけ余計な〝敵〟をつくるまいという小心な姿勢が見えすいている点である。政治的信念に生きるならば、少々どころか、どんな大敵をも恐れないのが、政治家としての正しいあり方ではあるまいか。
さきに引用した第七頁に、政治評論家戸川猪佐武氏を、「戸川某」と表現している。一流紙読売の政治部主任記者という経歴をもち、政治評論家として新聞雑誌から、ラジオテレビで活
躍し、反河野派とはいえ、衆院初出馬で二万近い得票を得て、泡沫候補ではないという証拠を示した同氏を〝車夫馬丁〟並みの〝某〟という表現を、どうして使用したかということである。