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最後の事件記者 p.192-193 怪しまれない人物は?

最後の事件記者 p.192-193 番頭に大男は禁物である。金のある奴は大体からして、肥った小さいのが多い。私は五尺七寸五分の長身、眉目秀麗で、あまり〝番ちゃん〟スタイルではない
最後の事件記者 p.192-193 番頭に大男は禁物である。金のある奴は大体からして、肥った小さいのが多い。私は五尺七寸五分の長身、眉目秀麗で、あまり〝番ちゃん〟スタイルではない

やがて女二人が出かけ、男二人は夕食を食べてからおでかけである。「あの年でどうしてあんなに金が?」と、首をカシげながら、女将が夕刊に眼を通すと、パッと眼を射たのが「百万円持

ち逃げ」の記事だ。宿帳とつき合せてみると、名前も住所もほとんど同じ。

『もう恐くてヒザがガタガタ……』と。そこで、相談かたがた本社へ急報したという次第だった。

部屋にはボストンバッグが二つ。中をあけてみることは容易だが、もし全くの人違いだったらエライことだ。まず、小島行夫が、小島行雄であることを確認せねばならない。「二人に会っても怪しまれない人物は?」と、考えついたのが、旅館の番頭である。

番頭に大男は禁物である。客を見下すことになるし、金のある奴は大体からして、肥った小さいのが多い。私は五尺七寸五分の長身、眉目秀麗で、あまり〝番ちゃん〟スタイルではないが、これは演技カで補うことにした。衣裳は、肝心なのがズボンである。これは坐りつけているため、ヒザが丸くなっていなければいけない。そこで、ツンツルテンだけれども、衣裳はすべて本物と決めた。

同行の記者は、写真の手配、サツとの連絡係だ。こうして、準備万端整えて、初日兼千秋楽の幕が上ったのは夜の十時すぎ。主役の私は帳場のオモテイタツキである。

表がガヤガヤとやかましくなったとみるや、男たちは付近のキャバレーの女の子たちに囲まれ

て、御機嫌うるわしい御帰館、いや登場である。

『お帰りなさいまシ』

帳場から飛び出すや、小腰をかがめて、モミ手よろしく、スリッパをそろえる。

『オット、お危うございます』

小島の腕をとるとみせかけて、実は身体捜検。ピストル、アイ口類の兇器が、背広の下にかくれていないかと、さわってみる。

『何分、夜は女中どもを休ませますので…。何しろ、労働何とかの時代で…』

と、言い訳しながら、酒だ、ビールだと騒ぐのをあしらって、再び部屋での酒盛りのサービスに忙しい。台所では、女将や女中たちが、他処行き姿の番頭まで加えて、おびえたような顔で待っている。

番頭作戦成功

女の子たちが、「菓子」というので、また台所へ飛んできて、菓子鉢を持ってゆくと、

『ドオ、番頭さん、甘いのは?』