
その第二は、たとえば炭坑のチェーン・コンベヤが故障を起こせば、モーターを分解して完全修理せずに、力まかせにチェーンを引っ張って無理やり動かしてしまう、といったような原始的なソ連的方式から、一万人のスパイをつくっておけば、裏切り、死亡その他の事故で、一万人が百人に減っても、その最後までソ連へ忠誠を誓う百人に期待するということだ。つまりスパイの目減りを見越していたともいえよう。だからソ連にとっては、裏切りのスパイ達によって、その組織のある程度が暴露されても、十人でも百人でも〝本物〟が残ればよい、と考えているに違いない。
〝スパイ〟を拒否しても、殺されもせずに無事引揚げて、静かに平和な幸福につつまれて生活している人がいるということは、〝生きて帰る〟ために誓約書を書いてしまっても、引揚げてきた