だから彼らは、ノガミの夜に遊冶郎を求めていながらも、決して〝泊まりの客〟は取らない。いわゆる〝ショート〟ばかりである。
「だってェ……」
和ちゃんは、シナを作っては甘えた声を出す。
可愛いい。
こういう〝彼女〟を見ていると、オカマだと知っていながらも、グッと抱きしめてやりたいような感じを、フト、触発されるからフシギだ。
「……泊まりは、スゴーク、疲れるのよ。お客が、寝返りを打つたびに、ハッとして、目を覚ますの……。だから、一晩中、まんじりともできないの」
「フーン。どうして?」
「だってェ。オトコって、スケベだもん。……夜中に、目を覚ましたりした時、すぐ、アタイたちの身体に、触りたがるじゃない? そしたら、一パツでバレちゃうじゃない」
つまり、姿と心とを、どんなに装っていようとも、〝現実〟は、男性なのである。造化の神におすがりしない限り、どうしようもないのである。
酔客や、場馴れしていない客などは、ショートであれば、必ず、〝満足〟させ、〝疑い〟ももたせずに帰す自信はある、と、和ちゃんは断言する。
「お女郎サンや、パンパンなんか(彼女は、前者にはサンをつけていたが、後者は、憎しみさえこめた呼び方をした。やはり競争相手だからであろうか)は女だから、サセりゃ良いってなもんで、努力しないのよ。
アタイたちは、それは、懸命なサービスをするのよ。だって女じゃないんだもン……」
つまり、前戯にすべてをかけて、客を〝出発進行〟の極限にまで、持っていってしまう。
そして、スマタ(素股)で放出させる。それは、極めて短い時間だから、相手に気付かせないそうだ。
掌に、コールドクリーム(ワセリンを使うのはヒドイ)をつけるから、緊縛自在である。
「で、客は放出して、落ち付くだろうが、キミたちは、どうするんだい?」
「客を取るオカマのほとんどが和服姿なの、気付くでショ? オカマは、決してハダカにならないの。スマタをやる時には着物を、襦袢や湯文字といっしょに、上にまくりあげて、〝自分のモノ〟をオナカに密着させそのフクラミを衣類のフクラミでゴマ化すのよ」
「ヘェ?」
「客がイクと、同時に、アタイたちもイクのよ。終わって、オコシ(湯文字)が、オナカに、ベタッと付いているのが、なんとも、たまらないの……」
客と同時に、オカマも放出する、というのであった。
だが、これは、決して〈男色〉ではない。相手が、対象を男性として意識していないからである。
しかし、ノガミには、彼女らを、男色の対象としてやってくる好事家もいた。そんな時には彼らは、天下晴れて、繚乱の菊花を散らすこともある、のだそうだ——。