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新宿慕情 p.138-139 膣だけは日本の医者ではダメらしいわ

新宿慕情 p.138-139 男根と睾丸の切除は、東京の医者にかかった。ヤミ手術なのである。ヤミだから高価い。「二、三百万円かかったわ…」と、彼女はボカしていう。
新宿慕情 p.138-139 男根と睾丸の切除は、東京の医者にかかった。ヤミ手術なのである。ヤミだから高価い。「二、三百万円かかったわ…」と、彼女はボカしていう。

申しわけ程度の、小さな布切れを下につけただけの、彼女の身体は、そのチチブサのように

白く、丸く、美しく輝いて、ステキであったが、どうしても優しく拒んで、その布切れを取ろうとしない。

田舎のこと、東京に出てきたこと、親や兄弟のこと。抱き合ったままの物語は、時々、彼女の瞳にキラリと光るものさえ浮べるほどで、なにか〝秘密〟を匂わせていた……。

はじめの間は、この私でさえ彼女の戸籍が錯誤から「男」と記入されてしまっていた、法的無知のために、その訂正の手続きが取れないでいるのかナ? と思いこんでしまったのであった。

私の〈新聞記者的好奇心〉は「それで?」「そして?」「どうして?」と、彼女を追い込んでいって、とうとうオトした。〝オトす〟というのは、「全面自供」させるということだ。

このハスキー・ホーマン嬢は実は、男性だった。そして、性転換手術の途上にあったのだ。

男根と睾丸の切除は、東京の医者にかかった。ヤミ手術なのである。ヤミだから高価い。

「二、三百万円かかったわ……」

と、彼女はボカしていう。医者の名前は? とたずねると、

「それだけは許して!」

と、絶叫に近い声でいう。

イヤがる彼女を口説き落して私はパンティを脱がせた。

まじまじと、明るい電灯の光のもとで、〈事実〉を見た。

——ノガミの半陰陽と同じだ!

東大の、あの鑑定写真と、まったく同じものが、そこにあった。

人差指と中指とで、外陰部を押しひろげてみると、やはり、〝小野小町〟だった。

睾丸の摘出によって、やはり身体は女っぽくなるらしい。チチブサは、注射でふくらませられよう。だが、彼女が最後までパンティを取らなかったように、〝最後のモノ〟がないという悲しみが、彼女に涙を誘わせるらしい。

「でも、いま、お金を貯めているのよ。膣だけは、日本の医者ではダメらしいわ。……八百万円ぐらいかかるんだって……。それに、外国へ行く旅費も必要だもンね……」

呼びこみバーで働く女としては、美しすぎる彼女だったが、あの種の店は、女の子の定着が悪いし、付き合いがないから、彼女の〝身許〟がバレるおそれが少ないこと。そして、荒稼ぎも可能だ、ということだった。

だが、性転換の費用、ざっと一千四、五百万円を稼ぐためにその〈青春〉を、ネオン街に埋没させる青年——。そんな連中がいるのが、〈新宿〉なのだ。