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最後の事件記者 p.106-107 実は、あの先生は男だった

最後の事件記者 p.106-107 郷里からあずかって、医大に学んでるメイが、やはり付近の婦人科の女医と同棲同様、女同志だから構わぬが、何とか連れもどす手はないか…
最後の事件記者 p.106-107 郷里からあずかって、医大に学んでるメイが、やはり付近の婦人科の女医と同棲同様、女同志だから構わぬが、何とか連れもどす手はないか…

半陰陽の女医事件

「ナゾの女性」といって、半陰陽の男が、みてくれが女のため、女として育てられ、東京女子医大を卒業、婦人科の女医として、付近の娘を次々と犯していった事件も、最初は〝ニュートンのりんご〟だった。

上野署の防犯係で遊んでいると、一人の初老の人物がやってきた。

『実は御相談があって……』

若い刑事とダベっていた私だったが、主任と話しこんでいるその人の言葉のうち、

『全く、女が女にホレるなんて』という、短かい一言に私の注意力がヒッかかった。

あとで主任に聞いてみると、その人は付近の薬局の御主人、郷里からあずかって、医大に学んでるメイが、やはり付近の婦人科の女医と同棲同様、女同志だから構わぬが、何とか連れもどす手はないか、という相談だったということだ。

ズベ公のアネゴの同性愛なら知っていたけれども、この話にはいろいろとオカシなところが多い。興味を持って調べてみると、付近の薬専の学生だった娘、旅館の娘、娘、娘と、今までにも

その女医とアツアツの若い娘が多いのだ。

しかもその女医、家に風呂がないのに、いまだかつて銭湯へ来たことがないという。

――男に違いない。半陰陽だゾ!

私はピンときて、調べはじめた。そして、ついに確実な証言をとり得たのだ。やはり、付近の薬局の娘が、はじめはイヤがっていたのに、ついには同棲、しかも、入れあげたあげくに、結核で死んだという。その母親を、一生懸命に口説き落したところ、「実は、娘が息を引きとる時、あの先生は男だった、と、何もかも話してくれました」と、その話を詳しくしゃべってくれたのである。

こうして、グロテスクな〝宿命の肉体〟物語が、特ダネとなったのだが、毒牙にかけられるべき幾人もの娘さんたちを救ったはよいが、その先生は夜逃げ同様に引越してしまった。思えば先生も可哀想だった。

女医事件後日譚

ところが、この事件には後日譚がある。

最後の事件記者 p.108-109 大喝一声『何をするのッ!』

最後の事件記者 p.108-109 相手は医者だから、怒ったら硫酸ぐらいブッかけられるゾ、と、散々おどかされた
最後の事件記者 p.108-109 相手は医者だから、怒ったら硫酸ぐらいブッかけられるゾ、と、散々おどかされた

女医事件後日譚

ところが、この事件には後日譚がある。その年の夏、新婚旅行もしなかった私たち夫婦は、父

の墓参もかねて盛岡へ旅行した。

そのある日、せまい盛岡の道路で、バッタリと、〝女医〟先生の愛人に出会ってしまったのである。私は、署に相談にきたその伯父さんが、二人の仲を無理に割いて、岩手医大に転学させたということを知っていたので、顔をみた瞬間、「ア、彼女だ」と、即坐に気がついた。何しろ、彼女の先生への打込み方の凄いのを知っていた私は、こんなところで喰いつかれたら大変だと、足手まといの妻をつれていただけに、いささかあわてたものだった。

記事にする前に、すっかり取材を終えて、最後に先生にインタヴューにでかけた。デスクは心配して、先輩記者を一人つけてくれたのである。相手は医者だから、怒ったら硫酸ぐらいブッかけられるゾ、と、散々おどかされたので、医院の前にとめた車は、エンジンのかけっぱなし。

ドアもあけておいて、キャッといって逃げこんだら、即坐にスタートしてくれと、運転手とも打合せて、いよいよ乗りこんだ。出てきたのが彼女である。

名刺を出して、面会を求めると、先生が出てきた。タバコをくわえ、「何御用?」と、気安く玄関に立って。パチッとライターをすった。

その瞬間、ヴェテランのカメラマンは、ほとんど同時にフラッシュを輝やかせた。私たちは、

怒ったら飛び出そうと、ハッとして先生をみると、写真をうつされたのを気付いていないらしい。ライターの光とフラッシュとが完全にダブったのだ。

さて、いろいろ質問をはじめたところ、先生は「愛情の自由」を主張する。彼女も、側に坐って、うなずきながら相槌をうつ。

そして、この調子ならと、カメラマンがスピグラを構えたとみるや、彼女はサッと仁王立ちに先生の前に立ちはだかり、大喝一声。

『何をするのッ!』

その時の印象は、小柄な女性なのに、仁王立ちとか、大喝一声とかがピッタリするほどであった。

『アッ!』と叫んで、私たちが腰を浮かした時には、カメラマンは素ッ飛び出して、車でブブブッと逃げてしまった。

その彼女と、せまい道でバッタリだから、私があわてたのもムリはない。しかし、彼女はすぐには気付なかった。