半陰陽の女医事件
「ナゾの女性」といって、半陰陽の男が、みてくれが女のため、女として育てられ、東京女子医大を卒業、婦人科の女医として、付近の娘を次々と犯していった事件も、最初は〝ニュートンのりんご〟だった。
上野署の防犯係で遊んでいると、一人の初老の人物がやってきた。
『実は御相談があって……』
若い刑事とダベっていた私だったが、主任と話しこんでいるその人の言葉のうち、
『全く、女が女にホレるなんて』という、短かい一言に私の注意力がヒッかかった。
あとで主任に聞いてみると、その人は付近の薬局の御主人、郷里からあずかって、医大に学んでるメイが、やはり付近の婦人科の女医と同棲同様、女同志だから構わぬが、何とか連れもどす手はないか、という相談だったということだ。
ズベ公のアネゴの同性愛なら知っていたけれども、この話にはいろいろとオカシなところが多い。興味を持って調べてみると、付近の薬専の学生だった娘、旅館の娘、娘、娘と、今までにも
その女医とアツアツの若い娘が多いのだ。
しかもその女医、家に風呂がないのに、いまだかつて銭湯へ来たことがないという。
――男に違いない。半陰陽だゾ!
私はピンときて、調べはじめた。そして、ついに確実な証言をとり得たのだ。やはり、付近の薬局の娘が、はじめはイヤがっていたのに、ついには同棲、しかも、入れあげたあげくに、結核で死んだという。その母親を、一生懸命に口説き落したところ、「実は、娘が息を引きとる時、あの先生は男だった、と、何もかも話してくれました」と、その話を詳しくしゃべってくれたのである。
こうして、グロテスクな〝宿命の肉体〟物語が、特ダネとなったのだが、毒牙にかけられるべき幾人もの娘さんたちを救ったはよいが、その先生は夜逃げ同様に引越してしまった。思えば先生も可哀想だった。
女医事件後日譚
ところが、この事件には後日譚がある。