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雑誌『キング』p.132下段 幻兵団の全貌 与えられた合言葉は

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.132 下段
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.132 下段

その男は、私と同じように注意深く、しかも疑わしそうに、さらに反問する。私は新聞記者と名乗る前に、彼に与えられたはずの、合言葉を使ってみて、彼の反応をみなければいけない。とっさに私は、彼がさきごろ✕✕✕の用事と称して上京したことを思い浮かべた。✕✕✕というのは、東京霞ヶ関付近のある役所の名前だ。彼が歳末の忙しい時に、そこの用事のために、日帰りでも行かねばならないというからには、必ず何か関係があるに違いなかった。マサカ、私の知らない合言葉ではあるまい。それとも、連絡場所かな?

『アノウ、実は✕✕✕の……』

語尾は不明瞭にニゴしてしまう。反応は!?

『アア、そうですか。どうぞこちらへ』

果たして、彼の疑い深い慎重な態度は一変してしまい、心安く応接室に招じ入れてくれた。✕✕✕の誰ともいわず、もちろん私の名前も告げないのに、✕✕✕だけでこのように態度が変わるのは、やはり合言葉だろうか。

やがて彼(G氏)は、ベニヤ板一枚の仕切りをあけて現れた。歳末の挨拶ののちに、私はそのまま名前を名のらず、〝駒場〟に与えられたはずの合言葉を、反応試験の切り札として投げつけた。

『ときにどうです……あなたの事業は成功して