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雑誌『キング』p.131下段 幻兵団の全貌 私は狙われている

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.131 下段
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.131 下段

う事件があったではありませんか』

事実、さる二月二十四日、秋田県仙北郡金澤西根村農業熊常久之助さん弟、千葉久太郎(三五)さんが、東京で誓を破って帰郷直後、『私は誰かに狙われている。誰か訪問客がなかったか』などと口走っていたが、ついに夜九時半ごろ自宅物置で首をくくって、自殺をとげてしまった、という事件も起きている。

筆者の手許には、二百名近いⒷの誓約書の人たちの名簿が作られている。彼らの職業を拾ってみれば、うなずけることも多いだろう。

曰く。食品会社員、逓信職員、鉄道職員、官庁資料課長、弁護士、県牧畜課長、新聞社員、特別調達庁職員、証券会社員、経済関係官庁事務官、県水産課長、百貨店経営、教員。

事件はまだ進展中であり、微妙な関係もあって、現況に関する資料のほとんどを、伏せざるを得ないのは、筆者の遺憾とする所である。

雑誌『キング』p.131中段 幻兵団の全貌 誓を破った男

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.131 中段
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.131 中段

『とんでもないことです。初耳です。人違いでしょう』と。だが、彼らの行動には疑惑につつまれたナゾがある。

Ⓑのスパイたち。その一人はいう。『合言葉がささやかれるのは、もう少し近い将来、米ソの関係がもっと緊迫してからでしょう』と。また一人はいう。『合言葉の男は、もう日本中を飛び廻っていますよ。そして、スパイたちは一生懸命の活躍をしているんです』と。その男は声をひそめて続けた。『何故なら、私の所に来ないからです。私は暗い〝かげ〟を背負った生活に堪えられなくなり、当局の保護を願って誓を破ったのです。不思議に、奴らにはそれが分かるのです。そして裏切り者は、チャンと選り分けて、合言葉をささやこうとしないのです。第一、つい最近関西方面で、東京で誓を破った男が帰郷の途中に、二人の暴漢に襲われて〝お前はシャべってしまったナ〟と散々な暴行をうけたとい