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p58下 わが名は「悪徳記者」 並び大名の記者たち

p58下 わが名は「悪徳記者」―事件記者と犯罪の間―三田和夫 1958 この発表を咀嚼して、批判を加えることもできないのである。これが果して、新聞記者であろうか。役所の発表文がそのまま活字になって、紙面にのるだけである。
p58下 わが名は「悪徳記者」―事件記者と犯罪の間―三田和夫 1958 この発表を咀嚼して、批判を加えることもできないのである。これが果して、新聞記者であろうか。役所の発表文がそのまま活字になって、紙面にのるだけである。

これは発表である。誰でもが簡単に知り得ることは、これはニュースとしての価値が低いのは当然である。

例えば、両国の花火大会の記事は、ニュースではあるが、誰でもがこのニュースにふれることができる。公開されているニュースだからである。機会は均等である。

新聞記者の中にも、こういう公開されたニュースしか書けない記者がいるし、それが多い。特ダネの書けない記者である。それは、その記者が、不断の勉強を怠っているからである。記者の財産である、ニュース・ソースの培養を心がけていないからである。

役所を担当しても、その役所のスポークスマンしかしらないし、スポークスマンの言い分を文宇にして本社へ伝えるだけである。この発表を咀嚼して、批判を加えることもできないのである。これが果して、新聞記者であろうか。だから、役所の発表文がそのまま活字になって、紙面にのるだけである。心ある読者は、一度役所の記者会見なるものを覗いてみられよ。二十人もの記者がいても、質問の発言をするのは二、三人だけである。それは決して代表質問ではない。並び大名の記者たちには、質問すら浮かんで来ないのである。

あんたにやるよ

私はサツ廻りののち、法務庁、国会、警視庁、通産省、農林省、法務省と、本社の遊軍以外に、これだけの役所のクラブを廻ってみたが、どこのクラブでもそうである。記者会見で談論風発という光景は少ない。質問さえできない記者は、他社の記者の質問によって「成程そうか」と思い、本社へ送る時には、自分の質問であるかの如くよそおうのである。