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新宿慕情 p.070-071 丸山明宏でなきゃ出前しないというのか

新宿慕情 p.070-071 「丸山明宏の部屋の隣で正論新聞というんだ。隣に出前して、どうしてウチにはできないのだ」「牛やになんか絶対行かないゾ!」
新宿慕情 p.070-071 「丸山明宏の部屋の隣で正論新聞というんだ。隣に出前して、どうしてウチにはできないのだ」「牛やになんか絶対行かないゾ!」

ファンが出前を

そんなある日。丸山家のドアの前に、民芸風な出前の食器がおいてあった。たまたま、その食器を下げにきた女性に出会って、お店をたずねたら、「牛やです」という。

メニューは知らずとも、食器から判断して、美味そうだったので、出前を頼むべく、牛やに電話したら、「ウチは出前はいたしません」という。

「丸山明宏の部屋の隣で正論新聞というんだ。隣に出前して、どうしてウチにはできないのだ。タノムよ」

「イエ、出前はしないんです」

「ナニを! 丸山明宏でなきゃ、出前しないというのか、バカモン!」

その後も、丸山家の前には、益子焼風の食器が出ていたりするのを、見たりするたびに、牛やにハラが立った。

多分、店としては出前をしないのだが、女の子が、丸山明宏を見たくて、持って行ったのであろう。

「チキショウめ。牛やになんか絶対行かないゾ!」

——しかし、付近一帯のトウトウたる事務所化に抗し切れず、丸山家は、大木ビルを引き払って成城に引っ越してしまった。

その最後の日、挨拶に顔を見せて、「ガラクタを残して行きますが、ご利用になるのでしたらどうぞ」と、〝彼女〟がいった。

私は、西洋骨董みたいなものを拾ってきて、社員たちと分配した。私のところに、古めかしいカサ立て、山本デスクは、金属製の扇子のオ化けみたいな、間仕切り板みたいなものを、持ち帰っていった。

空室になった隣を、我が社が借りて、間の壁をブチ抜いて広げた。あとで気が付くと、ドアのノブまでが、西洋骨董みたいなヤツだった。

そして、丸山明宏がいなくなって、出前しないハズの出前食器を見かけなくなって数カ月。ハラが立ったのも忘れて、牛やに出かけていって、この、天下一のしゃぶしゃぶに、ゴ対面することになった、のだった。

誇り高きコック

スープを持ち帰り

京都の祇園すゑひろのしゃぶしゃぶは、野菜といっしょに、丸い小餅を入れる。これがまた旨

い。だが、牛やはきしめんでしめる。

新宿慕情 p.072-073 美味いものをハラいっぱい食べる主義

新宿慕情 p.072-073 読売時代から「三田ほど、メシのオゴリ甲斐のある奴はいない」と、極め付きであった。
新宿慕情 p.072-073 読売時代から「三田ほど、メシのオゴリ甲斐のある奴はいない」と、極め付きであった。

京都の祇園すゑひろのしゃぶしゃぶは、野菜といっしょに、丸い小餅を入れる。これがまた旨

い。だが、牛やはきしめんでしめる。

思うに、しゃぶしゃぶの牛肉よりも、店の味の違いは、どうも、ゴマダレの隠し味にあるようだ。

意地汚い私は、近ごろでは、しゃぶしゃぶのあと、社に電話して、夜勤の者にナベを届けてもらう。残ったスープを、持ち帰るのである。

徹夜の原稿書きの時に、このスープに冷や飯を入れ、玉子を落として雑炊を作る。これがまたなんとも美味なのである。

私の食事ぶりは、まったくのところ、旨そうに、全部、平らげるのだ。だから読売時代から「三田ほど、メシのオゴリ甲斐のある奴はいない」と、極め付きであった。

もともとが、不規則な生活である。だから、食事だって、不規則である。しかし、私は、ハラが空いた時に、美味いものをハラいっぱい食べる主義だ。どうやら、これが、私の健康法の基本らしい。

つまり、食事中心主義で、間食などはあまりしない。たまに「疲れたナ」と感じた時に、洋菓子程度の甘味を要求する。追分ダンゴを食べたい、と感じた時などは、より疲労している時なのだろう。

追分ダンゴでなければ、中村屋の月餅かアンマン(これに、バターの固まりをコスリつけて食べると、元気百倍。オロナミンCドリンクよりも効く)、でなければ、花園まんじゅうの、春日山クラスの

甘さだ。

酒を呑む時は、あまり、料理を食べない。ツマミも、ほとんど食べない。アルコールの時はアルコール一筋だ。

だから、お招ばれの席で、料理屋に行く時など、「今夜は食べよう」と、決心していれば、酒は付き合い程度に抑えて、モリモリ、料理を残さずに食う。

つまり、呑む時には、ハシゴでベロベロになるけれど、バタンキューと眠ったあと、睡眠数時間で、ノドの渇きに目を覚まして、冷たい水をゴクゴクと飲む。そしてまた、一、二時間眠って小用で起きる。

起きればまた水である。合計して、一升ぐらいも飲むだろうか。そして、入浴する。

ぬる目の朝風呂に入り、ガスをつけて熱くする。その間にもまた、氷を入れた水を飲む。

徹底して水を飲む

こうして上がると、流汗は滝の如く、寒中でも、火の気のない部屋で、バスタオルを腰に巻いたまま、十分、二十分は新聞を読んで、汗がひくのを待つ。

汗がひくと、カーッと、ハラが空いてきて、ペコペコ腹に、モリモリと、三杯ぐらいのゴハンを入れる。

ハラが空いた時に、ハラいっぱいの食事。それに、呑んだら徹底して水を飲む——これが、私

が健康な理由だ、と思う。