痛くもない腹を探られる」タグアーカイブ

最後の事件記者 はしがき

最後の事件記者 はしがき 01
最後の事件記者 はしがき 01

はしがき

私が、さる七月二十二日、横井社長殺人未遂事件の指名手配犯人を、北海道に逃がしてやった、ということで、「犯人隠避」罪の容疑に問われ、警視庁捜査二課に逮捕されてから、もう五ヵ月になる。

ということは、私が在職十四年十ヵ月にもおよぷ、読売新聞社会部記者の職を投げ出してから、五ヵ月になるということだ。つまり、私はその逮捕の前々日に社に辞表を出したからである。

私には私なりの論理があって、「辞めるべきだし、辞めねばならない」と思って、サッバリと辞表を出したのだが、世の中というのはむつかしいもので、あまり辞めッぷりが良かったので、かえって痛くもないハラを探られたらしい。

つまり、「奴は取材だといってながら、後暗いから辞めるのだろう」とか、「安藤組の顧問という、高給の就職口が決っているから、平気なンだよ」とか、いったたぐいだ。

ある三流雑誌が、〝悪と心中した新聞記者〟という題で、私のことを、安藤とは法政の先輩後輩

の仲で、安藤のツケで銀座、渋谷を飲み廻っていた、と、全く事実無根のことを書いた。保釈出所してそれを読んだ私は、早速その社へ抗議に行った。