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迎えにきたジープ p.144-145 東京製薬、付属血液研究所長

迎えにきたジープ p.144-145 Since she supplies dried blood plasma to the UN forces, at the salon of Ms. Takahashi, president of Tokyo Pharmaceutical, US military officers also gathered .
迎えにきたジープ p.144-145 Since she supplies dried blood plasma to the UN forces, at the salon of Ms. Takahashi, president of Tokyo Pharmaceutical, US military officers also gathered .

『本多の専攻は?』

『細菌』

事務的な、意味のない応酬だった。

『兵役は?』

『陸軍技師、満洲第七三一部隊付』

『復員年月日は?』

「分らないわ』

『その後の職業は?』

二人とも、レースのカーテンを通して、舖道に行交う人々の足をみつめている。

『長屋研究所に復職』

『現在も?』

『違うわ』

沈黙が再び二人を支配するのが恐かった。間のびした、呟くような会話だった。

『ぢゃ、今は?』

『東京製薬取締役、付属血液研究所長よ』

『エ?』

勝村は我が耳を疑うように、顔をあげてチェリーをみつめた。テーブルを越えて彼女の両腕を確かりとつかまえていた。

『何だって? もう一度!』

終りまで聞かずに彼は立上って歩き出していた。

『東京駅!』

表の駐車場でタクシーに怒鳴る勝村の姿が、カーテンでボヤけながらも、チェリーの瞳に映った。彼の乗った車が吐きだしたガソリンのスッとした匂いが、ガラスを通して彼女のまわりにただよってきたようだった。

『本多さん、大変な目に遭ったのよ、今』

十八貫もの豊満な身体を弾ませながら、高橋サキ女史が研究室の扉をあけた。

『チョッと待って』

ここは所長室に続いた本多の個人研究室だった。ヂット顕微鏡を覗く本多の顔を見守っているのは、意外にも外人だったので、女史もいささかたぢろいだが、馴れたものでニッコリ会釈した。

国連軍に乾燥血漿を納めるようになってからは、衛生関係の将校も女史のサロンの客となっていたから、研究所に外人がいても不思議ではなかった。

本多が眼をあげて外人をみた。微笑が口辺に浮ぶ。

『生きています。大丈夫です』