と私は深コクなる寂莫感と恐怖心に包まれ、彼等に都合の良い様にすべてを答え
たり。
3 日本には壁新聞があるか。壁新聞をどう思うか?
日本には斯様なものはない。然し学校に於ても会社に於ても、之と同じ様な雑誌を発行して各人に配布している。
意見の発表として又宣伝用として、或は啓蒙の為、壁新聞は良いと思う。
4 日本は何故に敗北したか?
イ、日本の科学がおくれていた。
ロ、日本の社会機構が悪かった。
ハ、戦争の目的が間違っていた。
5 ソ連の参戦をどう思うか。
正しかった。戦争に苦しみある世界人民の解放戦であった。
6 ソ連の国家社会制度を如何に思うか?
良ろしい、ソ連は理想的国家である。
7 ウン、そうである。日本も将来斯様な国家にならねばいけない。然るに日本の資本家、財閥は米国の資本家財閥と手を握り、ソ連に対峙している。将来米ソ戦が起るかも知れないが、若しも米ソ戦が勃発したら、お前は何れに援助するか?
私はソ連に味方するであろう、と言わざるを得なかった。
これ等の事は総べて白紙に問、答とも私に筆記署名せしめたり。
尚、大尉は通訳を通じて露語にて書き、之にも私の署名強要せり。
8 私が『ソ連に味方するであろう』と答うるや、中佐は傲然と威猛高に次の事を署名せよと命じたり
イ、私の偽名を川とす。
ロ、私は日本へ帰ったら政治、交通、経済、主として私の専門たる重工業の分野に於て、情報を提供することを約束する。
一九四七年三月—日 署 名
茲で中佐は私に何か質問はないかと云へり。私は茫然として放心状態にあり、一刻も早く此のノロハシキ部屋を出たかったので別にないと答へたり。中佐は又次の如く私に筆記署名せしめ、暗記を強要せり(書面を見ずに五—六回も云はせたり)
9 あなたは何時企業をやるつもりですか?
私は金がある時に。
一九四七年三月—日 署 名
そして次の様に説明せり。
『あなたは何時企業をやるつもりですか?』と問はれたら、『私は金がある時に』と答へればよ
ろしい。