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雑誌『キング』p.109下段 幻兵団の全貌 五人の場合

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.109 下段 二、五人の場合

二、五人の場合

雲をつかむような〝幻〟の調査はさらに続けられていった。やがて、現に内地に帰っているシベリア引揚者の中に、誰にも打ち明けられないスパイとしての暗い運命を背負わされたと信じこんで、この日本の土の上で生命の危険までを懸念しながら、独りはんもんしているという、奇怪な事実までが明らかになってきた。そして、そういう悩みをもつ数人の人たちをやっと探しあてることができた。

彼らの中にはその内容をもらすことが直接死につらなると信じこみ、真っ向から否定した人もあるが、名を秘して自分の暗い運命を語った人もあり、また進んで名乗りをあげれば、同じような運命にはんもんしている他の人たちの勇気をふるい起こさせるだろうというので、一切を堂々と明らかにした人もいた。

こうして約二年半、明るい幸福な生活にかげをさす〝暗さ〟におびえている人たちもあるのを知って、私はまずその〝暗さ〟——それは即

雑誌『キング』p.109上段・中段 幻兵団の全貌 国際スパイ団

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.109 上段 写真・小針延二郎
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.109 上段 写真・小針延二郎

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.109 中段 写真・脅迫状
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.109 中段 写真・脅迫状

パイ団〟の存在を証言したのです!』

だが、はやり立った私を、老練な部長は軽くたしなめて笑った。

『メクラの象見物を知ってるかい。エ?!』

私の調査報告をずっと受け取っていた部長には、このスパイ団は一収容所や一地区の問題ではなく、まして収容所付きの一NK将校の意志で組織されたものなどではなく、非常に膨大な国際スパイ団的な内容を持った組織であることが、早くも判断されていたに違いない。若い私が功をあせ

りすぎて、尻尾をつかんだだけで書いてしまっては、全貌を逸するおそれがあったわけである。

(写真キャプション 参議院で重大証言をした小針氏)
(写真キャプション 小針氏に数多く送られた脅迫状の一つ)