日別アーカイブ: 2020年5月10日

黒幕・政商たち p.098-099 知らぬ存ぜぬの奇怪なお話

黒幕・政商たち p.098-099 何千万、何億という金が、使途不明になるということは、あまりにもバカゲているではないか。
黒幕・政商たち p.098-099 何千万、何億という金が、使途不明になるということは、あまりにもバカゲているではないか。

福田一議員の側近筋では、「弘さんというのは、全くのお坊ッちゃんで、そんな悪事のできる人ではない。第一、芝で喫茶店を経営しているのだから、喰うに困るわけじゃなし、誰か、

悪い朝鮮人にカツがれたのではないだろうか」と、はなはだ同情的であるが、福田弘、金沢政男の両代表取締役の下には、I大蔵省係長、I通産省といった、元役人二人もいるのだから、そもそもの、この会社の構想は、このあたりからスタートしていると見られよう。

大臣もひっかかった知能犯罪

当の福田一議員は、人を介して「全日本流通機構という会社のことに関して、ユスられているということはない。すべて、弁護士にまかせているので、私からは何もお話することはない」として、これまた、否定的な返事である。日綿にしても、全面否定しているが、銭高組が宅地造成、葵(あおい)土木が施工とまで、スケジュールが決まり、業者名まで、明らかになっているのに、そんな事実はない、というのも、解せないことではあるまいか。

また、顧問、相談役の諸氏が、これまた、知らぬ存ぜぬの奇怪なお話である。福田弘が事前に、福田赴夫蔵相のもとを訪ねて、御高話を拝聴している事実がある(村上官房長答弁)ところからみるとやはり、諸先生方にも、しかるべき何らかの手が打たれているとみられるのに、今となっては、鹿十(シカトウ、花札の十月の鹿が横を向いていることから、知らぬふりをすること)とは、これまた、解せないお話でもある。

日綿と三和銀行とのつながりに関しても、大阪の消息通はこう語る。

「この話は私も聞いてはいた。しかし裏付けをとることは、むづかしいことですよ。何故なら、この事件の関係者は、みな〝おとな〟だからネ……」

最後に、さとう印刷の佐藤社長は、首をかしげながら、こう語る。

「すべて麻生先生におまかせしたので、不渡り手形も、私の手許にはない。また、私のもとに、警視庁の刑事が二人、訪ねてきて事情をきいてはいったが、もう、それっきりです。どうなっちゃったのでしょうね」

事件があって、被害者が出た。関係者の父親が見舞金を出した。——これは、事実である。しかし、被害者は他には現れてこない。

事件があって、加害者が出た。ユスってるから、遊んでも喰えるという男がいるのだから、これも事実だ。しかし、ユスられている被害者がいない。

名前の出てくる人、会社。みんなが否定している事件——これを、〝怪談〟といわないでいられようか。警視庁の刑事すら、その足跡を消してしまっている。現職の大蔵大臣が否定し、元通産大臣が否定しているが、両省の役人の古手が加わっている会社の、知能的な犯罪! この両者の否定を、国民に納得させてくれるものは、一体、誰なのか。

何千万、何億という金が、使途不明になるということは、あまりにもバカゲているではないか。そして、今ごろはまた壮大な本社ビルを新築したミシン会社から、相当な金額の金が、Y たちのグループに、流れ出しているにちがいない。

黒幕・政商たち p.100-101 演説一本槍の男がいた

黒幕・政商たち p.100-101 九頭竜ダムの解けないナゾ 彼は叫ぶ。政局をおおう〝黒い霧〟は……この演説のマクラを聞いただけで、街頭の聴衆は散りはじめる。
黒幕・政商たち p.100-101 九頭竜ダムの解けないナゾ 彼は叫ぶ。政局をおおう〝黒い霧〟は……この演説のマクラを聞いただけで、街頭の聴衆は散りはじめる。

何千万、何億という金が、使途不明になるということは、あまりにもバカゲているではないか。そして、今ごろはまた壮大な本社ビルを新築したミシン会社から、相当な金額の金が、Y

たちのグループに、流れ出しているにちがいない。

対外貿易でさえ、荷抜きが横行しているほど、商業道徳が地におちている時代とはいえ、企業内に詐術めいた部分を抱えた会社が、あまりにも多い昨今である。あなたの会社も、この新知能暴力団〝潜入屋〟に狙われてはいないだろうか!

第6章 九頭竜ダムの解けないナゾ

昭和四十三年。さる一月の総選挙、東京三区の候補者の一人に演説一本槍の男がいた。ポスターとハガキと演説、彼の選挙運動らしきものはただそれだけである。だから有力日刊紙も彼を〝ほうまつ候補〟扱いとし、選挙記事の中でも黙殺されてしまった。彼は叫ぶ。政局をおおう〝黒い霧〟は……この演説のマクラを聞いただけで、街頭の聴衆は散りはじめる。もう耳にタコのできた言葉〝黒い霧〟……。それだけで、彼は……。

黒幕・政商たち p.102-103 利権と陰謀と悪徳とがうずまき

黒幕・政商たち p.102-103 私は、この電発九頭竜ダムにからむ〝疑惑の数々〟を、機会あるごとに究明して、戦後最大の汚職といわれる事件の真相をキャンペーンした。
黒幕・政商たち p.102-103 私は、この電発九頭竜ダムにからむ〝疑惑の数々〟を、機会あるごとに究明して、戦後最大の汚職といわれる事件の真相をキャンペーンした。

戦後最大の汚職の真相

三百億円に群がる黒い蟻

開票の結果は、一、四九四票。三区の総投票数四十七万票の三百十三分の一しかとれなかった。だが、この千五百票の支持者は、彼の演説のうち、〝黒い霧〟につづく、「かの電発九頭竜ダムの問題では…」にフト耳を傾け、足を止めた人たちであったに違いない。麻布中学、慶大という名門校コースの履歴をもつこの男が、〝ほうまつ候補〟扱いの恥辱にも耐えて、何故、立候補したのであろうか。

電発—電源開発法による特殊法人「電源開発株式会社」はこう略称で呼ばれる。株式会社といっても、株主は政府と九電力の十人だけ。資本金六百一億円のうち、六百億円は政府の出資というのだから、その性格もうかがえよう。

昭和二十七年に創立されてから十余年の社歴を持つにいたったがこの十年間の電発をめぐる政治疑惑は、佐久間ダムの輝かしい成功をよそに、「九頭竜ダム」の名とともに、日本を暗くおおっている。

石川達三の政治小説『金環触』に具体的に示され、田中彰治事件で報道もされたが、三百五十億という巨費が投じられる「九頭竜ダム」とあっては、自民党の総裁選もからんで、利権と陰謀と悪徳とがうずまき、果ては〝ケネディ暗殺〟まがいに、ナゾの犠牲者すら生んだのであった。

池田首相秘書官をつとめ、大蔵官僚としてのエリート・コースを歩んでいた中林恭夫氏の突然の死。九頭竜ダム入札問題の渦中の人、政界紙社長倉地武雄氏の変死——ともに、飛降り自殺、息子の凶行と、それぞれに〝解決〟はされているが、「ウォーレン報告」と同じく、素直に信じない多くの人たちがいることは事実である。

一体、そこで何が行なわれたのか? 巨額の金が動く土木工事に、〝政治的圧力〟がつきまとう。

私は、この電発九頭竜ダムにからむ〝疑惑の数々〟を、機会あるごとに究明して、戦後最大の汚職といわれる事件の真相をキャンペーンした。

過去の事件ではあるが、その「人」と「事件」と役割との関係を明らかにして、社会的弾劾を加え、糾弾されねばならないからである。

危険と困難とは、このキャンペーンの前途に予想される。しかし、どうして、〝九頭竜のナゾ〟は〝小説〟の形をとらねば書けないのだろうか。「真実の報道」の形で、私はこの〝壁〟

に挑む決意を、いよいよ深くしたのだった。

黒幕・政商たち p.104-105 緒方克行氏がその決意を固めた

黒幕・政商たち p.104-105 池田首相夫人満枝さんの入札問題での〝活躍〟を、清水建設の幹部がウッカリ洩らしてしまったという「事実」さえ出ているではないか。
黒幕・政商たち p.104-105 池田首相夫人満枝さんの入札問題での〝活躍〟を、清水建設の幹部がウッカリ洩らしてしまったという「事実」さえ出ているではないか。

危険と困難とは、このキャンペーンの前途に予想される。しかし、どうして、〝九頭竜のナゾ〟は〝小説〟の形をとらねば書けないのだろうか。「真実の報道」の形で、私はこの〝壁〟

に挑む決意を、いよいよ深くしたのだった。

すでに断片的に多く書かれ、小説としてまとめられている「九頭竜」ではあっても、これを十年という時の流れの中でその全貌を正確に記録し、報道することも必要である。

ことに、九頭竜で大きな比重を占める、池田首相夫人満枝さんの入札問題での〝活躍〟を、清水建設の幹部がウッカリ洩らしてしまったという「事実」さえ出ているではないか。完全犯罪でも、時間の経過が思わぬ過失を招くものだ。まして、利害の変転や、関係者の力の転移は、時間の経過とともに動くのだから、取材はある場合には容易になってくる。

緒方克行氏が、その決意を固めたのも、時間の経過が一番大きな原因であろう。そして、私はこのキャンペーンで、究明されなければならない問題点の主なものへの、疑問の提起をしようと思う。

現実の調査と取材とは、まだまだこれからの長い時間を必要とするだろう。

【疑問】

その一、計画変更の経緯 電発と北陸電力との竸願はなぜか。電発に決った時、なぜ水路が遠くなり発電力が落ちたのか。土建業者とのクサレ縁はないのか。

その二、不正入札 土建業者の談合は? クチバシを入れた政治家夫人はいないか。

その三、人事問題 藤井総裁実現のため誰と誰が動いたか、エンギをかついだ末広がりの八千万円の金は誰の手に?

藤山愛一郎をめぐる閨閥
元資生堂社長 福原有信 元東洋電気取締役 松本信太郎 美誉子
中上川彦次郎 カツ
藤山雷太 み禰
元日本陶器会長 広瀬実光 広瀬治郎 桜子
元外相 藤山愛一郎 久子
参議院議員 中上川あき
大日本製糖社長 藤山勝彦 茂子
元日本金銭登録機社長 藤山照彦
日本NCR副社長 田中元彦
元日東化学副社長 藤山洋吉 しま

黒幕・政商たち p.105 藤山愛一郎をめぐる閨閥
黒幕・政商たち p.105 藤山愛一郎をめぐる閨閥