雑誌『キング』p.110下段 幻兵団の全貌 身上調査

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.110 下段
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.110 下段

具体化されたある計画(スパイ任命)に関して、私が呼び出された第一回目という意味であって、私自身に関する調査は、それ以前にも数回にわたって怠りなく行われていたのである。

作業係将校のシュピツコフ少尉が、カンカンに怒っているぞと、歩哨におどかされながら、収容所を出て司令部に出頭した。ところが行ってみると、意外にもシュピツコフ少尉ではなくて、ペトロフ少佐と並んで恰幅の良い見馴れぬNKの少佐が待っていた。

私はうながされてその少佐の前に腰を下ろした。少佐は驚くほど正確な日本語で私の身上調査をはじめた。本籍、職業、学歴、財産など、彼は手にした書類と照合しながら一生懸命に記入していった。腕を組み黙然と眼を閉じているペトロフ少佐が、時々鋭い視線をそそぐ。

私はスラスラと正直に答えていった。やがて少佐は一枚の書類を取り出して質問をはじめた。フト気がついてみると、それはこの春に提出した、ハバロフスクの〝日本新聞〟社編集者募集の応募書類だ。

『何故日本新聞で働きたいのですか』

少佐の日本語は丁寧な言葉遣いで、アクセントも正しい、気持の良い日本語だった。少佐の浅黒い皮膚と黒い瞳はジョルジャ人らしい。

『第一にソ同盟の研究がしたいこと。第二はロ