雑誌『キング』p.111上段 幻兵団の全貌 極東軍情報部将校

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.111 上段
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.111 上段

シア語の勉強がしたいのです』

『宜しい、よく分かりました』

少佐は満足げにうなずいて、帰ってもよいといった。私が立ち上がってドアのところへきたとき、今まで黙っていた政治部員のペトロフ少佐が、低いけれども激しい声で呼び止めた。

『パダジジー!(待て!)今夜、お前はシュピツコフ少尉のもとに呼ばれたのだぞ。いいか、分かったな!』

見知らぬ少佐が説明するように語をつぎ、

『今夜ここに呼ばれたことを誰かに聞かれたならば、シュピツコフ少尉のもとに行ったと答え、ここにきたことは決して話してはいけない』と教えてくれた。

こんなふうに含められたことは、はじめてであり、二人の少佐からうける感じで、私はただごとではないぞという予感がした。見知らぬ少佐のことを、歩哨はモスクワからきたんだといっていたが、私は心秘かにハバロフスクの極東軍情報部将校に違いないと思っていた。

それからひと月ほどして、私はペトロフ少佐のもとに再び呼び出された。当時〝日本新聞〟の指導で、やや消極的な〝友の会〟運動から、〝民主グループ〟という積極的な動きに変わりつつある時だった。ペトロフ少佐は、民主グループ運